巨人4番「岡本和真」、クロマティのおかげで“復活” 巨人OB篠塚和典が指摘

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 巨人軍第89代目の四番打者、岡本和真――。2018年に飛躍的な進化を遂げた生え抜きの長距離砲が、今年のCSファイナルで打ちまくった。阪神相手の4試合で、打率.533、3本塁打、7打点の大暴れだ。

「初戦の1打席目に本塁打を打てたことが、ちょっと気楽になったというのがあるかもしれない」。本人は謙遜気味にそうコメントしていたが、文句なしにCSファイナルのMVPに輝いた。

「前半戦、打たなかったことをみんな忘れているんじゃないかと思う」。岡本自身もヒーローインタビューで語っていたように、レギュラーシーズンの序盤は不調に苦しみ、四番を外されることもあった。

 ただ、最終成績は143試合に出場し、打率.265、31本塁打、94打点と数字的には昨年と比べても遜色はないが、周囲からは期待が大きいせいか、「まだまだ物足りない」という声も聞こえてくる。

 実際、巨人のOBは岡本をどう見ているのか。巨人の一軍打撃コーチなどをつとめた経験がある、野球評論家の篠塚和典氏は「まだ23歳、四番を任されて現時点では良くやっている。プロの一軍で実質2年しかやっていないわけだから」としたうえで、岡本の打撃について、こう話す。

「数字から言うと、本塁打と打点については言うことない。問題はやはり打率だね。今年も序盤から苦労したが、シーズンを通じて、確率を上げないと厳しい。また、『四番打者』として評価されるのは内容も必要になる。淡白に凡打するケースが目立ち、その内容はまだ足りないと感じる。(シーズンの)最後に数字の帳尻はあったかもしれないが、『四番の存在感』はこれから身についてくるんじゃないかな」

 成績自体は“合格点”が与えられる。しかし、不調があったとしても四番を外れる試合があるというのは、まだ『真の四番』と呼ぶにふさわしくないということだ。

「昨年、ある程度の成績が出たので自信はつけたと思う。今のままでやっていけば今年も大丈夫という気持ちもあったのだろう。昨年、つかんだ感覚そのままでシーズンに入ったことで(序盤に)苦労した」(前出の篠塚氏)

 岡本の弱点はアウトコースといわれる。左足や左腰の開きが早く、インコースに比べてアウトコースは圧倒的にスイングが弱くなる。空振りが多くなるのもそのためだ。  

 だが、この“弱点”を克服したことで、序盤のスランプから脱出した。そのきっかけを作ったのは“意外な男”だった。巨人軍史上最強の外国人選手と呼ばれたウォーレン・クロマティ氏である。

 クロマティ氏が8月6日、中日戦(ナゴヤドーム)の試合前練習にゲストとして登場。同氏は「地面から力を生み出すスイングができていた選手。脚部を使うように話した」と語り、岡本の打撃練習を打撃ケージ裏から観察して、熱心に指導していた。

「岡本は自らの弱点を意識していたようだけど、対策ができていなかった。変化が見えたのはクロマティが指導してからだ。気づいた点を直接、選手に伝えるクロマティの指導方法が現在の選手には適しているのかもしれない。我々もそうだったけど、自分で見て良い部分を盗む、というのが当然だった。でも今の選手は自分でというより、指示されるのを待っている感じがある。クロマティの指示が的確で、岡本もしっくり来たんじゃないかな。打球方向の指示をはじめ、岡本に細かい指導をしたと聞いている」(同)

活躍できるか

 若手選手の中には、コーチといった周囲の指示を待ち、そこから自分に適したものを試す選手が増えている。プロの世界は個人事業主。少し前までは考えられなかったことだが、これも時代の変化というべきなのか。

「指示を受けて良い感覚を身につけても、その先は自分次第。反復練習をして身体に覚え込ませ、実戦で多くの経験を積んで『引き出し』を増やす必要がある。ここから岡本に求められるのは、継続して試合に出ながら結果を残すこと。それが5年、10年と四番を任されることにつながる」(同)

 ただ、良い指導を受けても、それを生かすも殺すも自分次第。ここから先の岡本の取り組みや考え方などすべてが大事になってくるということか。最後に、まもなく開幕する日本シリーズで岡本が活躍できるか、篠塚氏に聞いてみた。

「短期決戦はいかに調子が良い状態で迎えられるか。そういう選手がチームに多ければ勝てる。その役割は四番でなくても構わない。ラッキーボーイが出ればなおさら。岡本自身も調子の波が合えば、CSファイナルのような活躍はできるはず。でもこればかりは難しい。仮に調子が良くなくても、状況に応じた四番の役割ができるか。大きな経験を積める場所になるんじゃないかな」

 日本シリーズは巨人の四番として貴重な財産を得られる場所である。個人的な結果がどうであれ、ここでの経験が岡本を一回りも二回りも大きくすることだけは確実である。

週刊新潮WEB取材班

2019年10月19日掲載

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