阪神「近本光司」は“外れ外れ1位”、高校時代は甲子園と無縁、大阪ガスで才能が開花
セリーグの新人最多安打記録を更新
2019年の今シーズン終盤に“まさかの6連勝”を飾り、セ・リーグ3位に滑り込み、逆転でのクライマックスシリーズ進出を果たした阪神タイガース。文字通り見事な追い上げであった。
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だが、もしこの奇跡のAクラス進出を逃していたとしても、大の虎党なら、昨年のドラフト1位・近本光司(24)の大活躍だけでも大満足だったはずだ。
なんとプロ1年目で放った安打数は159本。1958年に読売の長嶋茂雄(83)が打ち立てて以降、誰もが越せなかったセ・リーグの新人安打記録153本を抜き去り、リーグの新人最多安打記録を61年ぶりに更新したのである。
さらに盗塁数も36をマークし、見事に盗塁王を獲得。これは新人としては01年に球団OBでもある赤星憲広(43)が39盗塁で盗塁王に輝いて以来になると同時に、日本プロ野球史上でも2人目となる快挙でもあった。
今シーズンの最終的な主な打撃記録は、586打数159安打で打率2割7分1厘、9本塁打、42打点、36盗塁と、新人王を獲得するには十分な成績。近年の阪神のドラ1選手としては、まさにこれ以上ない“当たり”となったのである。
だが、それも今となって言えることで、昨年のドラフト直後、阪神ファンの間には絶望感が漂っていたのではないだろうか。とあるマスコミの論調の中には“失敗ドラフト”と断言した記事もあったほどである。
それも無理もない。近本は大阪桐蔭高校の藤原恭大(19・千葉ロッテ)と立命館大学の辰己涼介(22・東北楽天)の指名抽選にことごとく敗れた“外れ外れ1位”だったからだ。
しかも阪神が外れ1位でまず指名した辰己涼介は、近本にとって、同じ高校の2学年後輩。つまり、楽天のドラ1となった辰己のほうが活躍することになれば、必要以上に外野が騒ぐことになり、阪神だけでなく近本本人も肩身の狭い思いをすることになるワケだ。
ただ、結果的にルーキー1年目のドラ1外野手は、そうした声を封じ込める以上の活躍を見せつけてくれた。そんな近本とは、アマチュア時代、どのような選手だったのだろうか、その足跡を追ってみることにしよう。
近本光司は1994年11月9日の兵庫県淡路市生まれで現在24歳。身長170センチ、体重72キロ。左投げ左打ちの外野手で遠投は100メートルを誇る。また、50メートルの走力は最速5秒8で、打席から一塁までは3・9秒前後で駆け抜けることができるほどの脚力も武器。打っては、振り切るスイングから自在に左右に打ち分けられ、かつ、ミート力のあるバッティングもその特徴だ。
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