日本シリーズ開幕 巨人不利で原監督の「運」を信じる【柴田勲のセブンアイズ】
さあ、いよいよ日本シリーズだ。巨人がソフトバンクとの戦いに臨み、7年ぶりの日本一に挑戦する。阪神とのCSファイナルステージを順当に勝ち上がった。投打ともに圧倒していた。
MVPには岡本和真が選ばれたが、丸佳浩の活躍も大きかった。第1戦で流れを引き寄せる1発、そして第4戦ではセーフティバントを三塁線に転がして、これが勝ち越し打となった。
私は66年の南海(現ソフトバンク)との日本シリーズで、先制のバントヒットを決めたことを思い出した。もちろん、狙ってのものだった。(注)
さて、本題だが、ソフトバンクは2年連続でいわゆる下克上での進出となった。日本一の行方だが、3・5対6・5、もしくは3対7で巨人が不利だと見ている。
ソフトバンクは投打のバランスがいい。選手層も巨人より厚い。ベテランたちは勝負所を心得ており、戦いの進め方でも一日の長がある。
開幕となる福岡での2試合、巨人は最低でも1勝1敗に持っていきたい。2連敗したら、一気にやられる可能性も出てくる。
カギを握るのはやはり、第1戦に先発する山口俊だ。初の大舞台となる。ソフトバンク打線は西武の1発攻勢とは違って、よくつながる。上位はもちろん、下位にも松田宣浩、内川聖一といった要注意の打者が並んでいる。
ソフトバンクの先発は千賀滉大だ。攻略は亀井善行から坂本勇人、丸佳浩、岡本と続く1~4番がどれだけ機能するかだ。5番以下の打線はソフトバンクに比べるとやや見劣りがする。
第2戦は巨人はクリストファー・メルセデスが有力だ。ソフトバンクは高橋礼、リック・バンデンハークのどちらかだろう。両軍の先発陣はともかく、リリーフ陣ではソフトバンクの方が上回っている。巨人は早めに得点して主導権を奪うことだ。
短期決戦ではラッキーボーイが出現することがある。今回、巨人から出るなら、打者ではなく投手からだと思う。例えば山口が2勝するとか。
だからこそ、大事な緒戦を託された山口には期待したい。とにかくムダな四球で走者を出さないことだ。前にも話したが、ヒットを打たれるのは仕方ない。落ち着いて自分の投球に徹してほしい。
腰痛で離脱していた菅野智之が第3戦目以降に間に合いそうだ。東京ドームに戻って、もつれる展開に持ち込みたい。もつれたら巨人にチャンスが出てくる。
私、原辰徳が持っている野球人としての「運」を信じている。もちろん、工藤公康監督も持ってはいるが、ここは原監督の方が上回っている。こう見ている。
巨人を長嶋(茂雄)さん、ダイエー(現ソフトバンク)を王(貞治)さんが率いた00年の「ON決戦」以来の顔ぶれとなった。大いに楽しみだ。
最後になるが、巨人はチャレンジャーの気持ちでぶつかってほしい。
注:大阪球場での第3戦の五回表2死三塁で、巧妙なバントを一塁方向に転がした。これが先制点となった。このシリーズで23打数13安打、打率・565を記録してMVPに選ばれた。