佐々木、奥川、石川は逃がしたが…ドラフト「外れ1位」で成功した球団はどこだ?

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 10月17日に行われたプロ野球ドラフト会議。佐々木朗希(大船渡)に4球団、奥川恭伸(星稜)と石川昂弥(東邦)に3球団と今年も1位指名は集中し、抽選の結果、佐々木はロッテ、奥川はヤクルト、石川は中日が交渉権をそれぞれ獲得した。だが、過去の指名を振り返っても、必ずしも抽選を外した球団が最終的に失敗するとは限らない。山田哲人(ヤクルト)などは「外れ外れの1位」から球界を代表する選手に成長している。そこで、抽選を外した球団にスポットを当て、その指名が妥当だったのか2位以降の指名も含めて検証してみたい。

 まず1位の抽選を外した7球団の最終的な1位指名選手は下記のようになった。

オリックス:宮城大弥(興南・投手)
日本ハム:河野竜生(JFE西日本・投手)
阪神:西純矢(創志学園・投手)
楽天:小深田大翔(大阪ガス・内野手)
ソフトバンク:佐藤直樹(JR西日本・外野手)
巨人:堀田賢慎(青森山田・投手)
西武:宮川哲(東芝・投手)

 この中で最も納得がいく指名なのは阪神になるだろう。1位で奥川を指名したが、高校生の大型右腕として、それに次ぐ存在と見られていた西を迷わずに指名。重複なしで交渉権の獲得に成功した。佐々木、奥川が突出しているため、外れとなったが、例年であれば1位入札があってもおかしくないだけのレベルの投手である。精神的にも大きく成長しており、熱烈な阪神ファンのプレッシャーに耐えられそうなのもプラス材料だ。また、阪神は、2位で高校球界を代表するスラッガーの井上広大(履正社)、3位で超高校級サウスポーの及川雅貴(横浜)といったスケールの大きい選手を積極的に指名。この部分でも目先の結果ではなく、将来的にチームを大きくしようという意識が強く感じられた。

 続いて上手い指名だったのが宮川を獲得した西武だ。レギュラーシーズンでは連覇を達成したものの、防御率は2年連続でリーグ最下位。それを考えても、投手の補強は必要不可欠であり、即戦力として期待できる宮川の獲得は納得がいく。ちなみに過去10年間の外れ1位で成功した選手には榎田大樹(阪神→西武)、松永昂大(ロッテ)、石山泰稚(ヤクルト)、増田達至(西武)、加治屋蓮(ソフトバンク)など社会人出身のリリーフ投手が非常に多いことを考えても、宮川の指名は成功に繋がる確率が高そうだ。また2位の浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ)も社会人のサウスポーでは屈指の実力者であり、これも的確な補強だった。

 少し迷いが見られたが結果的に良かったのは巨人だ。奥川を外して一度は即戦力の宮川に向かい、それも外すと再び高校生の堀田を指名した。チーム事情を考えると、即戦力よりも将来的な柱になれる高校生右腕の方が補強ポイントにはマッチしている。2位でもスケールの大きい太田龍(JR東日本)を獲得して、若手投手陣の底上げに繋げた。

 当初の方針よりもチームの弱点を優先したように見えたのが日本ハムとオリックスだ。日本ハムは佐々木を外して社会人サウスポーの河野を獲得。スケールの大きい将来のエースならば西という選択肢もあったと思うが、今年苦しんだリリーフ陣を厚くしたいという現場の思いを強く反映させたと言えるだろう。オリックスは石川を外して、弱点のサウスポーに方針転換。河野も外して、最終的には高校ナンバーワン左腕の宮城に落ち着いた。ただ2位で大型内野手の紅林弘太郎(駿河総合)を指名できたのはプラスといえる。

 一方で、強く疑問が残る指名になったのが楽天とソフトバンクだ。楽天は佐々木を外して社会人の内野手である小深田を指名した。小深田は内野ならどこでも守れる器用さとスピードが持ち味の選手だが、プロのショートのレギュラーとしては少し小粒な印象。本来ならセカンドを任せたいが、楽天は浅村栄斗がまだまだ元気で、ここに来年25歳の小深田が入っても出番は限られるだろう。ソフトバンクは石川を外して、外れ1位に社会人外野手の佐藤を選択した。チーム事情を考えると野手を優先するのは分かるが、必要なのは強打者タイプ。佐藤は三拍子揃ったリードオフマンタイプであり、そこにズレを感じる。外れ1位で井上広大、2位で菊田拡和(常総学院)を狙っても良かったのではないだろうか。

 ドラフトの最終的な結果が出るのは5年後、10年後だが、明確な狙いがなければ成功を再現することは難しい。そういう意味では今年のドラフトは外れ1位指名に明暗が分かれる結果になった。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月18日掲載

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