「デジタルタトゥー」で人生を終了させないために 専門家が教える予防と対策
若気の至りで自らネットにアップしてしまった恥ずかしい写真や個人情報、不本意ながら報道されてしまった過去のあやまち、トラブル……。ネットに一度書き込まれた個人情報は一生残る。たとえ自分がこの世を去っても、検索すれば出てきてしまう。こうした消せない個人情報を「デジタルタトゥー」と呼ぶが、それが原因で「再就職できない」「結婚を相手の親に反対された」など人生に多大な実害が出るケースが増えているという。デジタルタトゥーを刻まれた人間は、戦々恐々と生きていくしかないのか。インターネット事情に詳しい弁護士法人天音総合法律事務所・代表弁護士の正木絢生氏に聞いた。
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今年5月から6月にかけて「デジタル・タトゥー」(NHK総合)というドラマが放送された。いまやこの問題はドラマになるほど、ネットやSNS社会を生きる現代人にとって、避けては通れないものなのだ。
デジタルタトゥーの定義について、正木氏はこう解説する。
「デジタルタトゥーには、ネット上で個人を特定できる名前、住所などの個人情報、あるいは顔写真や裸の写真、逮捕歴や前科、事実無根の情報などがあります。投稿者は他人とは限りません。たとえば自分が出した動画や写真であっても、不本意な形で拡散し消すことができなければデジタルタトゥーといえます」
正木氏のもとには、デジタルタトゥーに関する問い合わせ、相談が数えきれないほど寄せられるという。
「住所を公表されていたずら目的の人が来てしまい、引っ越しを余儀なくされた」「実名が出ていることでいじめられ、職場にいられなくなった」「転職しようにも、転職活動に影響が出てしまった」など生活面にダイレクトに被害が出てしまったケースも少なくないという。
逮捕歴は削除できない前例も
デジタルタトゥーの法的解釈は次の通りだ。
「海外では、嘘の情報であれ事実であれ、公開された個人情報が見られないようにするプライバシー権、即ち『忘れられる権利』が認められています。デジタルタトゥーはその権利を侵害しているといえるでしょう」
ただし例外もあるという。
「たとえば犯罪歴は公共性を有する事実なため、書き込んだ側の表現の自由、それを閲覧する人は公共的な情報を知る自由も認められています。書かれた人、書いた人、それを見た人の権利が対立するという側面があります」
実際、過去の犯罪歴に関して削除が認められないケースもあった。
ある男性は、「自分の名前を検索すると5年以上前の児童買春の罪が出てくるので消してほしい」と訴えた。2017年、最高裁は、検索結果を新聞記事などと同じ「表現」ととらえ、検索サービスには今の社会で重要な役割があるとした。児童買春は社会的に強い非難の対象であるため、検索結果は削除できないとしたのだ。
忘れられる権利は、そのデジタルタトゥーの“刻まれ方”によって、認められる可能性が変わってくるという。
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