波瑠「G線上のあなたと私」が“凪のお暇・これ経ロス”の視聴者にお勧めの理由

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 10月期ドラマ(10~12月)が一部で始まった。話題作になるのは、どのドラマか? 視聴者の胸に刺さるドラマを予想すると、それはTBSの「G線上のあなたと私」(火曜午後10時)ではないか。7月期ドラマ(7~9月)の話題作「凪のお暇」(TBS)、「これは経費で落ちません!」(NHK)と底流にあるものが一緒だからだ。

「G線上のあなたと私」は、いくえみ綾さん(55)の同名人気漫画が原作。27歳で独身の主人公・小暮也映子を、波瑠(28)が演じる。

「凪のお暇」「これは経費で落ちません!」との最大の共通点は、主人公が青春末期であるところ。「凪のお暇」の大島凪(黒木華)は28歳、「これは経費で落ちません!」の森若沙名子(多部未華子)は30歳だった。そして、説明するまでもないが、どちらも独身だった。

 ここにきて青春末期の主人公がにわかに増えた背景の一つは、晩婚化の進行に違いない。独身のまま30代を迎える人が増え、その分、青春末期と呼べる期間が延びた。ただし、そんな単純なことだけが、青春末期の主人公が増えた理由ではないはずだ

 青春末期は人生のターニングポイントであり、そもそもドラマの主人公とするのに向いている。たとえば、結婚する、しないは本人の自由だが、親や周囲の声や視線が一番煩わしいのは30歳前後だろう。それまでの交際相手に、結婚するか否かの答えを求められがちな年代でもある。

 新卒時に選んだ職種や就職先にとどまるのかどうかを悩む人が少なくないのも30歳前後。その仕事の適正が自分にあるかどうか、好きか嫌いかは、この時期までには何となく分かる。学生時代からの生活スタイルや友人関係を継続するかどうかを考えがちなのもこの時期だろう。

 かくして青春末期は考え事や悩み、迷いが多い。一度立ち止まって自分を見つめ直す人も少なくない。人生の踊り場的な時期とも言える。その割に、これまでは30歳前後を主人公とし、その生き方を描くドラマは多くなかった。

 だが、7月ドラマで話題をさらったのは主人公が30歳前後のドラマ。エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』のドラマ満足度調査であるドラマバリューでは、1位が「凪のお暇」で、2位が「これは経費で落ちません!」。これまで主人公が30歳前後のドラマが多くなかったので、新鮮に映った側面もあったかもしれない。

 両ドラマはツイッター上でも話題で、「凪のお暇」は6月7日から9月21日までに計39回、「これは経費で落ちません!」は7月26日から9月26日までに12回、それぞれトレンド入りした。主人公が青春末期のドラマは、おそらく晩婚化した時代の要請だったのだろう。

「凪のお暇」の大島凪は28歳まで幸せな明日を信じて頑張ってきたが、迷いが生じ、立ち止まった。お暇に入った。このドラマは、まさに凪の踊り場を描いたものだった。

「これは経費で落ちません!」の森若沙名子も自分を愛する山田太陽(重岡大毅)の出現や会社内での出来事、出会いによって、それまでの人生観や生活観が揺らいだ。このドラマもまた踊り場に置かれた森若の日々を映像化したものと言えただろう。

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