D・フジオカ主演「シャーロック」が好発進 惨敗「モンテ・クリスト伯」との違い
ディーン・フジオカ(39)主演の月9「シャーロック アントールドストーリーズ」(フジテレビ)がスタートした。10月7日の初回視聴率は12・8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)で、月9としては6作連続の二桁発進となった。ディーンにとって、海外古典の原作モノはこれが3本目だが、二桁超えはこれが初めて。一体何が変わったのか。
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昨年4月期のアレクサンドル・デュマ原作「モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―」(フジ)は平均視聴率6・2%(最高視聴率7・4%)。今年1月6日に放送された、ヴィクトル・ユゴー原作「レ・ミゼラブル 終わりなき旅路」(同)は7・0%だった。フランスの古典文学を現代日本に舞台を置き換えるという大胆なドラマは、話題にはなったが、決して自慢できるような結果は残せなかった。
放送記者が語る。
「特に『モンテ・クリスト伯』は話題になりました。前年(17年)には、ディーンと武井咲(25)のW主演で『今からあなたを脅迫します』(日本テレビ)が放送されましたが、平均6・1%とコケた。にもかかわらず、彼を主演に起用し、原作が19世紀のパリを舞台にしたフランス文学と聞いて驚きました。脚本は良かったんですが、ディーンと山本美月(28)といったメインキャストの、お世辞にも上手いとは言えない演技が原因で、数字は良くなかった。それに続く『レ・ミゼラブル』も同様。それでもフジは諦めなかった。前2作同様、太田大プロデューサー(40)で、月9の主役にディーンを起用しました。しかも今度は、シャーロック・ホームズという。せっかく勢いを取り戻しつつある月9なのに、ずいぶん無茶をするなあと思いましたよ。しかも前作『監察医 朝顔』は、月9らしからぬ真面目なドラマで評判でしたからね」
シャーロック・ホームズといえば、コナン・ドイルが描いた探偵であり、19世紀後半から20世紀初頭のロンドンを舞台にした、ミステリー小説の最高峰と言ってもいいだろう。それをまた、ディーンが演じるというのだ。
「海外古典原作に加えて、レギュラーのキャストを見て、不安はさらに高まりました。ホームズがディーンで、相棒のワトソンには三代目 J SOUL BROTHERSの岩田剛典(30)、レストレード警部に佐々木蔵之介(51)、その部下のグレグスン警部には山田真歩(38)。佐々木はともかく、とにかく地味で、美人ヒロインがいない。男くさいドラマでもいいのですが、それでも『あぶない刑事』(日テレ)の浅野温子(58)や、『踊る大捜査線』(フジ)の深津絵里(46)など、男性の視聴欲求を支えるヒロインがいないわけです。山田さんは『あなたの番です』(日テレ)の怪演が光った話題の女優ですが、ヒロインとは違いますからね。これはヤバいんじゃないかと心配していましたが……」(同・放送記者)
ところが、あに図らんや、12・8%も取ったわけである。これをテレビマンはどう見ているのだろうか。
ディーンが演技に開眼?
他局プロデューサーが語る。
「脚本は井上由美子さん(58)。朝ドラ『ひまわり』(NHK、主演:松嶋菜々子[46])や、『GOOD LUCK!!』(TBS、主演:木村拓哉[46])、『白い巨塔』(フジ、主演:唐沢寿明[56])、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジ、主演:上戸彩[34])、『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK、主演:波瑠[28])など数々のヒット作で知られる人ですから抜かりはない。それだけに、ゲストがいい。初回は中尾明慶(31)、松本まりか(35)、SKE48の松井玲奈(28)に加えて、平泉成(75)、木下ほうか(55)、ヘバちゃんこと浅茅陽子(68)まで出ていて、誰がレギュラーなのか分からないくらい豪華だし、芸達者が揃っている。2話には、菅野美穂(42)と岸井ゆきの(27)が発表されていますが、他にも芸達者が出演するのだと思います」
脚本とゲスト出演者の演技が数字を取ったというのだろうか。
「もちろんその要素は否定しませんが、とにかくディーンの演技が良くなった。海外文学原作という気負いがあったのか分かりませんが、これまではなんだか気取った感じが良くなかった。今回はそれがなかった。むしろ上手いとすら思いました」(同・他局プロデューサー)
ディーン演じる誉獅子雄(ほまれ・ししお)ことホームズは、原作通り我が儘な変人だ。沈着冷静に推理を進めるのはもちろんだが、バイオリンの名手であることやボクシングの達人(ディーンはシャドーボクシングだが)であることなどは、原作を意識したのだろう。
また、警官の佐々木や見知らぬ大学生をアゴで使い、盛り上がってくると叫び、折り鶴をコウモリだと思うような常識のなさ、冷蔵庫の扉を閉めない……といったかなりクセのある人物なのである。ディーンは変人を演じる才能があるのだろうか。
「変わった人物を演じるほうが楽なこともあるでしょう。ただ彼の場合、ヒット中のコメディ映画『記憶にございません!』の影響があるのではないでしょうか。三谷幸喜(58)の監督、脚本で、史上最悪と言われながら記憶を失う総理(中井貴一[58])の首相秘書官を演じているのがディーン。総理の記憶喪失を国家機密として、補佐する重要な役を演じています。この評判もなかなかいい。おそらく、三谷監督はじめ、中井や佐藤浩市(58)などに揉まれたのが良かったのでしょう。芸達者たちが真剣にコメディを演じているのですから。もともと台湾で役者として活動してきたディーンですが、日本で注目されたのは、朝ドラ『あさが来た』(NHK)で五代友厚役を演じたのがきっかけ。『あさが来た』の平均視聴率は23・5%で、今世紀最高視聴率の作品です。以来、彼には女性ファンがついているので数字は持っている。彼に演技力がつけば、鬼に金棒かもしれません」(同・他局プロデューサー)