「水着グラビアは有名になるための踏み台」元グラドルが明かす業界の裏側

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アラサーで引退する子はある意味賢い

 嫌な撮影もお姫様扱いでペイされる。そして、イメージDVDと紙媒体のグラビアの格差がかなり大きいことが彼女の話からうかがえた。イメージDVDに出演していた時代、北山さんは劇的に貧乏だったと語る。

「イメージDVDが発売されて、ギャラが入金されるまでに3〜4カ月、遅いときだと半年くらいタイムラグがあるんです。だから、とても貧乏でグラビアをやっていた3年間は最低限のお金はまず自分のスキンケアに使っていて全く服を買えず、先輩のお下がりを着ていました。

 それで、ギャラの入金を待っている間は撮影会を入れていました。普通のアルバイトより少し良いくらいの給料です。でも、アマチュアカメラマンさんから卑猥なポーズを指定されたりセクハラされたりと、ストレスが多いので病んでやめていく子が多かったです」

 今、北山さんは撮影会はしていないものの、舞台や映画などの仕事だけでは食べていけないため、アルバイトをしつつ生計を立てている。北山さんは現在アラサーだ。

「この業界は見えない年齢制限があるので、アラサーあたりで引退する子はある意味賢いんです。ちゃんと一般人として生きていかなきゃという意識がある。でも私は夢を諦めきれずしがみついている状態です。

 10代からこの業界にいる女の子は『一般の女の子として生きていきたい』と引退していくパターンもあるし、『医療事務の資格でも取ってやめます』という堅実派の子もいます。ただ、引退して一般人になったのに、グラビア業界でのお姫様扱いから抜け出せずに戻ってくる子も少なくないです」

 昔はグラビアで名を売ってタレントや女優になるケースもあったが、現在はその枠がAKBグループで埋められており、さらに厳しい時代だとも北山さんは語る。

「でもこの時代、たった1枚のSNSに投稿された写真をきっかけに無名の人でも関係者の目に留まり、突然有名になれる時代でもあるんです。私も昔撮影したグラビア写真をInstagramにアップしたところ、たくさんの『いいね』がつきました。そうやってSNSきっかけで広まってほしいなと、そしてまたそろそろ水着グラビアをやりたいとは思っています」

 おそらく日本にしか存在しない水着グラビアという不思議な娯楽。男性たちがどのような心境で眺めているのか気になるが、おそらく「可愛い」と思う感情より、「ヌケるかどうか」の性的な目線だろう。

 水着グラビアをやりたくてやっている女性もいるはずだが、北山さんのように「いつか有名に」を目指してやっている人もいる。男性のエロ心をくすぐり、性を入り口にしないと知名度を上げられない構造。もちろん、女性芸能人が全員グラビアからのスタートなわけではないが、グラビアをやらなくても有名になれる方法が、もう少し主流になってもいいのではないだろうか。

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姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年10月11日掲載

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