「田舎暮らし」希望者に移住アドバイザーが伝授 絶対損しない不動産の探し方
値引きの必勝法とは!?
【鉄則10】庇のないウッドデッキこそ最大のリスク
なんと言っても、田舎暮らしの醍醐味は、都会暮らしでは望めない広いベランダやバルコニーからの眺望と、さんさんと降り注ぐ日差しのもとでのゆったりとした時間を過ごすことだろう。
日差しを満喫し、時には昼食などを楽しむために、田舎暮らしで初めて念願のウッドデッキを、という方も多い。ただ、ウッドデッキは屋内にある家屋の設備以上にメンテナンスが厄介で、経済的にも重荷になりうるのだ。
高度のある1000メートル以上の場所では、紫外線も強く、冬場の雪にも曝される。海辺はもちろん、潮風が朝に晩に吹きつける。ペンキの種類や用いる素材などで、耐久性が期待できるデッキはあることはある。
だが、デッキは時に足下から崩れ落ちてしまう。冬場の雪は根雪となり春先まで溶けず、さらに梅雨時の湿気が地面から立ち上り、デッキを土台から腐らせてしまうのだ。
実際に暮してみれば、早い場合にはわずか数年で崩れ落ちてしまい、そのまま放置されているデッキのある家屋をそこここに見かけることだろう。
最近では木目調の、本物の樹ではないデッキ素材も増えているが、やはり樹のぬくもりと質感にこだわる人も多い。ただ、本物の樹のデッキを長期にわたって持たせるためのメンテナンスは、100万円単位の費用がかかる。
ペンキを塗るだけでそんなに、と思うなかれ。プロの仕事となれば、ペンキの前に隅々まで高圧洗浄などで清掃し、ホコリを取り、表面の汚れを落としてからとなる。事と次第、状況によっては、新たにデッキだけ造り直したほうが割安にさえ思える場合がある。
それほどにメンテナンスの費用がかかるデッキだからこそ、当初のまま長持ちさせられるのならばそうしたい。それは結局のところ、デッキの先端まで、あるいは途中まででもいい、庇(ひさし)があるかどうかにかかっている。
庇があっても、雨風や雪の吹き込みを完全に遮断することはできない。だが、1年365日、完全に吹きっさらしになっている場合とでは、天と地ほどの差が出る。
【鉄則11】値引きはプロの不動産業者の手法に学べ
時期や状態により交渉過程は千差万別で、絶対に値下げができる方法はない。しかし「【鉄則4】物件を探すなら、あえて真冬に」で述べたように、値下げ交渉で有利なシーズンとして、まず間違いないのは、やはり冬場だ。それも11月下旬から1月末ぐらいまでだろう。
山梨や長野など、別荘地として古くから栄えている場所には、固定資産税に加えて別荘税、さらには管理別荘地などに建っている場合は管理費の支払いも生じる。売りたい側にとっては、年度をまたげば、二重苦、三重苦のごとき支払いが被さってくる。だからこそ新年度前に、売却手続きを完了したいのだ。
冬場は問い合わせ件数も少ない。1件の問い合わせでも、不動産業者もオーナーも逃したくない客だ。買い手市場に近い心理状態になる。そこで、物件の粗や修復が必要な箇所を丁寧に洗い出し、売り出し価格から値引かせるのだ。
「予算が少し出ているから、もう少し値引いて」と、漠然とした値引き交渉を繰り返す人がいるが、これはあまり説得力がない。
移住ブームの現在は、あくまでも「売り手市場」であることを忘れてはならないだろう。そもそも不動産業者もオーナーも、500万円とか1000万円といった物件に手を出そうとする買い手が、50万円の値引きが必要な450万円や950万円が、予算の上限であるはずがない、と見抜いてしまう。根拠のない値引き交渉は、単なる時間の無駄と言えよう。
繰り返すが、値引きには根拠と説得力が不可欠だ。それも、オーナーが納得するような指摘だ。そもそもオーナー側も、売り出し価格の根拠が希薄な場合が多い。
不動産業者やディベロッパー同士の取引でない限り、不動産業者は“売り手”からも“買い手”からも等しく3%ずつの手数料を取る。その点で、不動産業者にとって購入希望者も“お客さま”なのだ。この認識を、購入側もしっかりと持つことが大事だ。
つまり不動産業者は、客にとっての交渉代理人でもある。値引き交渉でも活用することが重要だ。もし不動産業者が客の立場に立ってくれたなら、こんな交渉をオーナーと行ってくれるかもしれない。
「屋根と外壁に穴があります。実際に住むには、他にも手を入れなければならないでしょう。補修費用は、これくらいの額になります。もし、更に厳しいお客さんが訪れた場合、もっと補修やリフォームの必要があります。ざっと見積もって、100万円から数百万円が余分にかかります。とすると、この費用を差し引いた価格で売却してもいいのではないでしょうか」
不動産業者がデジタルカメラで撮影した写真を見せながら説明すれば、数百万単位の値引きを「納得せざるを得ない」と判断するオーナーは少なからずいるはずだ。
実はこれ、不動産業者が物件を買う時によく使う手法でもある。プロの値引き手法を購入希望者が使えば、業者が「説得力のある指摘だ」と思うに違いない。
不動産業者が「このお客さんは、よく勉強している」と味方に付けての交渉、この搦(から)め手で、じわじわと値引きしていくのだ。
徹底した内覧が最も重要
【鉄則12】リフォーム箇所を指摘し、値引き条件を積算する
前編の記事で“冬眠”物件について触れた。秋に売りに出された別荘で、真冬の12月や1月に売れ残り、価格が停滞したまま“冬眠”のように眠っているものが少なくない。これが狙い目という内容だった。
別荘を売りに出したが、物件が“冬眠”状態になってしまった不動産オーナーは、不安を覚えることが少なくない。「このまま売れなかったらどうしよう」と心配になる。9月に物件案内を出したが、12月まで売れなかった場合、「少し値を下げたほうがいいかしら」と思い始めるものだ。
すでに夏をまたいだ物件なら、数百万円単位で値下げしているものもある。不動産業者は売り出し価格を表示する段階で、オーナーと打ち合わせ済みの値引き価格を組み込んでいるのがほとんどだ。
例えば「50万円なら引いてもいい」とか、「20万円までならOK」などと、業者に裁量が与えられている。
だが、買い手にとっては、そこからが勝負だ。実際は、不動産業者が与えられている裁量の、倍から数倍は値引きの可能性がある、と考えたほうがいい。
真冬の雪が積もった状態で天井を点検すれば、屋根材の老朽化にともなう雨水の滲出(しんしゅつ)や、残雪の傾向、さらに冬場の寒さなどもわかる。そこから、その家自体の傷み箇所を入念に点検すれば、いろいろと手を入れなければいけない部分が、夏場とは違った目線で見えてくるものだ。
そうした要リフォーム箇所は、それすなわち、値引き要素となる。こうした箇所をすべて紙に書き取り、その見積もりを、個人であっても、大まかに10万円単位で算定して概算を積み重ねていく。いわば値引きの積算である。
すると、あっという間に100万円単位に膨れ上がる。10万円単位は、決してべらぼうに高いものではない。現地の工務店や大工さん、リフォーム業者に依頼すれば、彼らは数万円単位での見積もりではなく、10万円をひとつの損益分岐の目安にした見積もりを作ってくる。
屋根のあそこが傷んでいる、窓枠、サッシ、外壁のあそこが傷んでいると指摘しながら、購入の具体性を示していけば、不動産業者もオーナーに更なる値引きを説得しやすくなるのだ。
実際、私が移住希望の知人に求められて立ち会った物件では、この手法で、当初1000万円近かった売り出し価格を、半額以下まで値引きさせたことがある。
これはオーナーや不動産業者を欺罔(きもう)するわけではない。実際に彼らでも、物件の要補修箇所など、もともと把握していない。購入側も事前に、購入後のリフォームや補修箇所を把握することができ、次の冬や梅雨時を迎える前に、修理に着手することができるのだ。
購入して最も後悔するケースは、春、夏、秋、冬と住み続けるごとに、その都度、別荘の不具合に気づく場合だ。不動産業者やオーナーが必要な情報をすべて伝えてくれると思ったら大間違いである。
値引きのためだけではない。安心して住むためにも細かいチェックが必要だ。そのためには、物件が動きにくい冬場に、何度も内覧を繰り返すのが最も効率がよい。
不動産業者もオーナーもシーズンを問わず、売りたいものである。春になって新年度をまたげば、税金処理もまた絡んでくる。なんとか春が来るまでにスッキリしたいと思う気持ちは焦りともなって、心理的に買い手優位となる。だからこそ、物件が“冬眠”に入った時期がお勧めなのだ。
なお、2018年4月から「インスペクション」制度が新たに導入された。インスペクションを日本語に訳すると「建物状況調査」となる。
政府は中古住宅市場を活性化させようとしている。そのため、中古住宅を売りに出す場合、専門家による外壁や基礎などの診断と、その開示を義務づけたのだ。
例えば、家の購入を考えている夫婦が、中古住宅に興味を持ったとする。不動産業者を訪れたら業者は夫婦に、住宅に欠陥があるのかないのか、補修すべき箇所があるのかないのか、あるとしたらいつ頃までに直す必要性があるのか、あくまで第三者として専門家が調査した結果を説明しなければならない。
これによって中古住宅に対する信頼感が増し、購入者が増えるというのが政府の考えだ。ただし地方の中古住宅は、ある程度の水準が保たれている。インスペクション制度が始まったとしても、飛びきり良質の中古住宅が売りに出されたり、詐欺まがいの悪質物件だったりということは少ない。
どの中古住宅も同じ水準だからこそ、地方の不動産業者が提示するリフォーム価格は、まずは倍額が吹っかけられている、と考えたほうがいい。
そのため業者に何度も住宅の欠陥を指摘し、しつこいほどのやり取りを繰り返し、最後は買い手側が「こんなに値引きさせてよかったのだろうか」と不安になったとしても、業者やオーナーは絶対に損はしないので安心してほしい。基本は、不動産業者が示した売値の半額以下に、どこまで持って行けるかが勝負である。
[2/2ページ]