ノーベル賞大本命! 16歳の活動家グレタさんへの違和感
16歳の活動家「グレタさん」への違和感(1/2)
わずか1年前にひとりでストを始めた無名の少女は、一躍、世界中から賞賛を集める存在となった。ついにノーベル平和賞の最有力候補にまで登りつめた環境問題のジャンヌ・ダルク――。だが、口を極めて大人たちを糾弾する彼女の姿には、どこか違和感を禁じ得ないのだ。
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15歳から自動車修理工場で丁稚奉公に励み、一代にして「世界のホンダ」を築き上げた本田宗一郎は、自著『得手に帆あげて』でこう述べている。
〈「若さ」は、よりよき将来を、誰にも気がねなしに要求できる特権を持っている〉
いま、世界中の誰よりも激しくこの「特権」を行使しようとしているのは、スウェーデンで生まれ育った16歳の少女だろう。その一挙手一投足に、大人たちは注目し、恐れ戦(おのの)きつつも、礼賛一辺倒の態である。
彼女を一躍、時の人にしたのは9月23日に米・ニューヨークで開催された国連「気候行動サミット」でのスピーチだった。
日本では、前日に行われた記者会見における小泉進次郎環境相の「セクシー発言」ばかりが取り沙汰されたが、世界の目はこの少女、グレタ・トゥーンベリさんにクギづけとなった。
中学校を卒業したばかりの若き「環境活動家」の言葉は極めて峻烈だ。曰く、
〈私はここに立っているべきではない。私は海の反対側で学校に戻っているべきだ。それなのにあなたたちは、私たち若者のところに希望を求めてやってくる。よくもそんなことができるものだ! あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢と子ども時代を奪い去った〉
〈私たちは絶滅に差し掛かっているのに、あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけ。何ということだ!〉
〈もし本当に状況を理解し、それでも座視し続けているとしたなら、あなたたちは“悪”だ!〉
〈あなたたちには失望した。しかし若者たちはあなたたちの裏切り行為に気付き始めている。全ての未来世代の目はあなたたちに注がれている。私たちを失望させる選択をすれば、決して許さない。あなたたちを逃がさない。まさに今、ここに私たちは一線を引く〉
両目にうっすらと涙を湛えながら、じっと正面を見据え、鬼気迫る表情で糾弾を続ける少女――。年輩者へのリスペクトもなく、口を極めて大人を罵る苛烈な言葉に眉をひそめ、当惑した向きも少なくなかったのではないか。確かに、過激な物言いはともかく、彼女の主張には頷ける部分もある。
2020年に運用が始まる、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」は、産業革命前からの平均気温の上昇を2℃未満、できれば1・5℃未満に抑えることを目標としている。だが、政治部記者によれば、
「各国の足並みは揃わず、その取り組みは目標値に遠く及ばないのが実情です。アメリカのトランプ大統領が就任早々、協定からの離脱を表明したのも記憶に新しいところ。一方で、気候変動を評価する国連機関“IPCC”はさらに厳しい試算を報告しています」
遅々として対応が進まず、状況だけが悪化する現状にグレタさんは「失望」しているわけだ。彼女が突きつける言葉は「あなたたち」、つまりはすべての大人に対する批判であり、そこに宿る感情はもはや「憎悪」と呼ぶのが相応しい。
にもかかわらず、スピーチを聞いた大人たちは、彼女に賞賛の拍手を惜しまない。日本でも、朝日新聞が〈こうした若者たちの怒りを重く受け止めねばならない〉と社説で持ち上げ、毎日新聞の1面には〈「おとぎ話」はやめて 怒るグレタ世代〉の文字が躍った。
それだけではない。
今回のスピーチに先立って、彼女はエスピノサ国連総会議長やオバマ前米大統領と面会。それ以前にもマクロン仏大統領やローマ法王と対面を果たし、ついには、今月11日に発表が予定されるノーベル平和賞の候補にも推薦された。しかも、イギリスのギャンブルサイトでは2位以下を軒並み大きく引き離し、断トツの「本命」扱いなのだ。下馬評通りの結果となれば、彼女はマララ・ユスフザイさんを抜いて史上最年少のノーベル賞受賞者となる。
とはいえ、16歳の少女に口を極めてこき下ろされながら、ただ賞賛することだけが大人の取るべき態度なのだろうか。
彼女と、彼女を持ち上げる大人たちへの違和感はどうにも拭えないのだ。
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