恐竜学者と人気作家を悶絶させた4歳の質問「恐竜と友達になれますか」

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 北海道むかわ町で発掘され、9月に新種恐竜と認められたカムイサウルス・ジャポニクス。頭から尾まで8メートルと大型で、全身の8割以上が見つかったことから世界からも注目されている。この大快挙のキーマンが北海道大学総合博物館教授の小林快次だ。

 一方、小林に対し思いを募らせてきた人気作家がいる。『鴨川ホルモー』や『プリンセス・トヨトミ』などの作品で知られる万城目学だ。現在万城目は恐竜発掘をテーマにした「ヒトコブラクダ層ぜっと」を執筆している。

 万城目も幼いころ学研の恐竜図鑑やドラえもん映画「のび太の恐竜」に夢中になった恐竜ファンだったが、今回の小説で「恐竜好きの少年」を描くため「最新の恐竜事情」を学び直したという。そこで小林の活動を知り衝撃を受け、長年小林に会うことを切望していたという。(以下「小説新潮」2019年10月号より一部抜粋)。

恐竜と友達になれるか

万城目 僕はこの対談のために3年を費やしたと言っても過言ではありません。

小林 えっ、本当ですか。

万城目 3年前、恐竜とメソポタミアとあれやこれやを組み合わせて小説を作ろうと思い立ったんです。いろいろ調べているうちに、小林先生が監修されたノンフィクション『ザ・パーフェクト』に出会いまして。

小林 北海道のむかわ町穂別(ほべつ)地区で発見された日本最大の恐竜化石、通称「むかわ竜」の、発掘の顛末記ですね。

万城目 それまで恐竜に関しては、小学生の時に読んだ学研の図鑑程度の知識しかありませんでした。調べていくと恐竜には羽毛があったとか鳥の祖先だったとかいろいろと新しい研究成果が出ていて、どんどん知識がアップデートされるのがとても面白かった。それで国立科学博物館で開催されていた恐竜博に行ったんです(2016年)。スピノサウルスが発掘された地層の名前が「ケムケム層」とあって、ケムケム層って何やねん! と思いましたね。小説のタイトル「ヒトコブラクダ層ぜっと」はそこから頂きました。ヒトコブラクダ層は地層ではないし、もちろん実在しないんですが、ケムケム層があるならいいだろうと。

小林 そのころ、僕のトークイベントにも来てくださったんですよね。

万城目 事前に質問を提出しておいたら僕の質問が読みあげられて、小林先生が「いい質問ですね」って言ってくれたんですよ。

小林 そういうことを言うのは、だいたいとっさに答えが分からない時です(笑)。

万城目 日本ではなかなか化石が出てこないのに、なぜわざわざ発掘作業をするのか? 外国でやったほうがいいんじゃないか、と訊いたら「日本ではアンモナイトを始め、年代を区切った研究をとても丁寧にやっていて、日本人の特性を生かした研究をしている」というようなことをおっしゃっていました。

小林 示準(しじゅん)化石ですね。地層の年代の指標になるので、たとえ恐竜の化石が出なくても、恐竜研究のために意味があるんです。

万城目 こういうお仕事されていると、いろんな質問が飛んでくるでしょうね。

小林 よく訊かれるのは「どんな恐竜が好きですか」「学者になるにはどうしたらいいですか」です。時々すごく難しい質問が来るんですよ。NHKラジオの子ども科学電話相談で4歳の女の子から訊かれたのは「恐竜と友達になれますか」。

万城目 おお。なれるんですか?

小林 まず友達の定義から考えないと(笑)。恐竜に友達という感覚があるかどうかもわからないし。で、結局出た結論は「向こうがどう思うかはわからないが、君が友達と言えば友達だ」。

万城目 恐竜には感情があるんですか。

小林 うーん、どうなんでしょうね。小さな身体の割にとても大きな脳を持つトロオドンでも、猫と同じぐらいなので。

万城目 猫は人間でいうと10カ月の赤ちゃんと同じぐらいの知能ですよね。なるほど、そんなもんなんですね。

 盛り上がるトークの最中、ついに万城目が「今日、どうしても聞いていただきたい話があって」と切り出した対談全文は「小説新潮」10月号に掲載中だ。

デイリー新潮編集部

2019年10月10日掲載

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