“結婚はいいけど、子どもが欲しい”はエゴ? 離婚してまで「選択的シングルマザー」になった彼女の思い

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「お金があれば」もうひとり産みたい

 2016年厚生労働省が発表した「各種世帯の所得等の状況」によると、前年の「子どもがいる現役世帯」のうちの「大人が二人以上」の貧困率は10.7%なのに対し、「大人が一人」、いわゆるシングルマザーやシングルファーザー世帯の貧困率は50.8%と半分以上の割合となっている。男女の賃金格差や非正規雇用者の割合を考えると、シングルマザー家庭の貧困率の高さが窺い知れる。友美さんも、経済的な不安はあるという。

「妊娠すると思わずに、離婚の直前に家を買ってしまったので、どうしようって思いますね。はたして住宅ローンを返していけるのか。でも、分譲マンションならではの住みやすさもあるし、駅に近くて、スーパーも近くて、歩いて行けるところに病院もあるのは子育ての上でもすごく便利です。

 将来的には娘に、習い事をさせたいし、大学にも行って欲しい。奨学金を負わせて貧困の連鎖は避けたい……そういう経済的な理由がなければ、本当はもうひとり欲しいです。うちは代々女系家族で、このままいくとまた娘も一人っ子で親戚もいないっていう、わたしが感じているのと同じ孤独感を持つようになるなって思うと、きょうだいができたらいいんじゃないかな、と思う」

 2018年に生まれた子どもの数(出生数)は91万8397人で過去最低を更新したという。一方で少子化を克服したと言われるフランスでは、婚外出生比率は 50%を超えているという。それを踏まえると、いま必要とされているのは、「経済的な不安さえなければ、ひとりでも産みたい」という女性たちへの支援だと思う。

 最後に、選択的シングルマザーをチョイスし、様々な困難を乗り越えてサバイブしている友美さんに、選択的シングルマザーの良い点を尋ねてみた。

「なんといっても、自由で楽なこと。もちろん、結婚して夫婦で暮らすっていう楽さもあるとは思うんだけど、シングルの楽さは『人に気を遣わなくていい』『子育てで揉めることがない』という点。

 例えばご主人がいれば、出社の時間にあわせて料理を作るってことになって、それって、だいたい女性側の負担になるじゃないですか。あとは産後に夫が、手伝ってくれないことにイライラするってよく聞くんですけど、そもそも、いないからストレスがなかったです。

 ただ、夫がいない分、周囲にサポートをしてくれる環境を作ることは大切ですね。うちは父母もわりと年であまり頼れないのがちょっとしんどいんですけど、それでも里帰り出産で3カ月くらいは実家にいました。とにかく、身近な人の手はあるに越したことはないですね、友人でもなんでもいいんですけど」

 そもそも子どもを産み育てるのに、「夫婦が揃っていなければならない」という風潮こそが社会のエゴではないだろうか。わたしたちがすべきは「産みたい」という女性が助けを必要とした時に手を差し伸べること、そう強く思った。

大泉りか(おおいずみ・りか)
1977年東京生まれ。2004年『FUCK ME TENDER』(講談社刊)を上梓してデビュー。官能小説家、ラノベ作家、漫画原作者として活躍する一方で、スポーツ新聞やウェブサイトなどで、女性向けに性愛と生き方、子育て、男性向けに女心をレクチャーするコラムも多く手掛ける。『もっとモテたいあなたに 女はこんな男に惚れる』(イースト・プレス 文庫ぎんが堂)他著書多数。2017年に第1子を出産。以後育児エッセイも手掛け、2019年には育児に悩む親をテーマとしたトークイベント『親であること、毒になること』を主催。

2019年10月8日掲載

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