“結婚はいいけど、子どもが欲しい”はエゴ? 離婚してまで「選択的シングルマザー」になった彼女の思い

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戸籍の父親欄が空欄なのは申し訳ない

 日々お腹が大きくなっていく一方で、離婚し、新居を整え、お腹の子の男性に妊娠を報告し……と問題は山積みだが、友美さんは持ち前のバイタリティーでテキパキと物事を整理していった。

「引っ越す前、まだ書類上の夫と同居してる状態で、つわりが始まってしまったので、『離婚のことで気分が悪い』って誤魔化していましたね。わざと生理用ショーツを干したりもして(笑)。それで無事に家の契約も済んで引っ越しして、ようやくひと月くらい経ったところで、元夫が離婚届にサインをしてくれて、離婚が成立。

 並行してお腹の子の父となる男性に、『(赤ちゃんが)出来ました』って報告したんですけど、とにかく『おろしてくれ』の一点張り。無理やりお金も渡されたし、向こうは頑固として折れない様子だったので、連絡を絶つことにしたんです。相手との唯一の連絡ツールはLINEだったんですが、それをブロックされたら縁が切れてしまうと思って」

 生まれてきた子に対する戸籍の問題もあった。離婚後300日以内に生まれた子は別れた夫の子と推定するという民法のルールがあり、自動的に元夫が戸籍上の父とされてしまうのだ。

「戸籍の問題については、事前に弁護士さんに相談して、元夫に出産したことを知らせるのは子どもが生まれてからにすることに決めました。知らせる際には、自分で報告したほうが、心証がいいっていうことで、わたしから電話して言いました。

 元夫は驚いていたものの『誰とも結婚するつもりはない』といったら、それはそれで納得してくれて、揉めることなく、家庭裁判所で『親子関係不存在確認』が認められて、無事に解決しました」

 元夫との問題は、綺麗に片が付いたものの、もうひとつ、棚上げになっている案件があった。朝香ちゃんの生物学上の父親の問題だ。しかし、選択的シングルマザーとなる上で、子どもの生物学上の父親とどう付き合っていくかについては、それぞれの考え方がある。友美さんの意向はどうだったのだろうか。

「私の場合は、娘に対して、戸籍の父親欄が空欄なのは、申し訳ないっていうのがありました。あと、自分がもしも死んだ時に、自分の実の父親に辿り着けないというのは、アイデンティティの問題が関わってくるかな、と。

 いつかは娘に言わないといけない時はくると思っていて。『パパのことは好きだったし、あなたのこともパパは好きだけど、ママとパパは結婚したくなかったんだよ』って伝えるつもりだけど、基本的には父親がわかるようにしておきたいっていうのがあって、認知はして欲しいと思っていました。

 なので、娘が生まれて半年経った頃に、実のパパに『元夫との戸籍の問題が、解決しました。会いにきてください』ってLINEをしたんです。そうしたら、会いにきてくれて『認知もするし、養育費も払う』っていう話になったんですが、その後、向こうが別の女性との間に子どもが出来て、結婚することになっちゃったらしく、有耶無耶になってしまって。

 ただ、そういうわけにもいかないから、『認知請求します』って連絡をしたら、『それは妻にバレるから困る』って話になって、今は、きちんとするから待っていてくれ、と言われている状態。会ってはいませんが、娘の写真だけは送り続けています。

 なので、今後どうなるのかは、わからないんですけど、ただ、養育費については、もらうと児童扶養手当が貰えなくなったりもするので、悩みどころでもあって……。児童扶養手当って、年に一度、審査があるんですが、なかなか厳しくて、面接では『家に男が出入りしてないか』とか『妊娠してますか』とかっていうことまで聞かれるんですよ。初めはビックリしました」

 児童扶養手当の不正受給を警戒してのことだろうが、面接でそんなプライベートなことまで、立ち入られることに抵抗を覚える女性は多いだろうし、そもそも男性が家に出入りしていたとしても、経済的バックアップを得られているとは限らない。

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