“結婚はいいけど、子どもが欲しい”はエゴ? 離婚してまで「選択的シングルマザー」になった彼女の思い

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不妊治療で夫が“妻だけED”に

 人工授精とは、採取した精子の中から運動が良好なものだけを選別・濃縮し、排卵の時期に合わせて、精液を子宮内へと管を通して直接注入する方法だ。1回あたりの治療費は1~3万円程度で、一般的には体外受精の一歩手前の治療とされている。

 ちなみに体外受精は1回平均で30~40万円ほどかかるので、経済的ハードルはより高いし、肉体的負担もさらにかかる。友美さんが体外受精に進まなかったのも、販売員という職業柄、排卵日に合わせて仕事を休むことや、体外受精を行った後に安静を保つのが難しかったからだという。

 妊娠・出産できるリミットがじりじりと近づいてくる中、友美さんの「どうしても、子どもを産みたい」という気持ちが、強まっていったのには、ある思いがあった。

「わたし、兄弟がいないし、親戚もいないんです。親が死んだら天涯孤独になってしまう。なので、どうしても自分の子ども、“家族”が欲しいっていう思いが強くて。

 もちろん元夫も、結婚している当時は、わたしの家族ではあったけど、『この人がいればいい』っていう感じではなかった。夫婦として強く愛しあっていれば、子どもが出来なくても仕方ない、ふたりで生きていこうって考えられると思うんです。でも、わたしの場合、元夫に対しては、そこまでの気持ちが持てなくて、これから先、何十年もふたりだけで暮らしていくのは、無理かもしれないって思っていました。

 それに実は、元夫とはまったくのセックスレスでもあったんです。それも不妊治療がきっかけだったんですけどね。男性って、この日に子作りするっていうプレッシャーに弱いじゃないですか。 “妻だけED”になってしまって、『君とは、無理』って断られたんですよ」

“生涯の伴侶”と考えるには物足りない夫、成功しない不妊治療、セックスレス……夫婦を続けていく気持ちがぐらぐらと揺らぐ中、友美さんは、朝香ちゃんの生物学上の父親となる男性と出会うことになる。

「ある時、同窓会に呼ばれて出席したんです。そこで中学校の時に同級生だった男性と再会して。久しぶりに会ったらお互いに惹かれ合って、お付き合いが始まったんです。付き合ったといっても、外で食事もしたことがないくらいの関係でしたけど」

 やがて、夫とは、これ以上一緒にいても仕方がないと決意し、離婚を持ちかけた友美さん。表向きの理由は「別れて新しい人生を歩みたい」として、不倫相手の男性の存在は明かさなかった。別れを告げられた夫は「別れたくない」と主張したものの、友美さんは別居に向けて、マンションの購入を決意。

 その契約までもう少しというところで、なんと妊娠が判明した。その頃には不妊治療も辞めていたため、夫ではなくお付き合いしている元同級生が、お腹の子の父親であることは明確だった。

「(付き合っている方の)彼は、子どもが出来たとしても、責任を取らないことはわかってました。けど、わたしは、『彼の子どもなら、出来てもいいかな』ってずっと思ってたんです。

 ただ、付き合ってるといっても、身体だけのさっぱりした関係だったので『この人とは結婚はできない』っていうのもありました。それでも、お腹の子をおろして、また次の相手を見つけるっていうのも、タイムリミットを考えたら難しいし、わたしには“結婚しないで、産む”っていう選択肢しかありえなかったんです」

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