“結婚はいいけど、子どもが欲しい”はエゴ? 離婚してまで「選択的シングルマザー」になった彼女の思い

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 現代社会を生きる女性が避けては通れない「婚活」「結婚」「妊活」「子育て」。これらのライフイベントに伴う様々な困難にぶつかりつつも、彼女たちは最終的には自分なりに編み出した「ライフハック」で壁を乗り越えていきます。女性官能小説家・大泉りかさんによる、読めば勇気が湧いてくるノンフィクション連載「女のライフハック」、待望の第7回です。

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男性と子どもの、両方の世話はできない

 友人の作家、深志美由紀さんは、自他ともに認める“ダメ男好き”で、これまで付き合った男性たちのダメっぷりを、愛情たっぷりに紹介する「ダメでもスキ」というコラム連載を某スポーツ新聞に持っているほどだ。

 そんな彼女が数年前、二度目の離婚をした後に新しく付き合った男性もまた、ダメ男だった。交際を始めてすぐに無職になってしまった彼に、美由紀さんは生活費を貸し与えるまでして尽くしたのに、最終的には破局。

 その彼と別れたという報告を受けた際に、「もう結婚はいいけど、子どもは産みたい。シングルで育てたい」と力強く宣言していたのが、印象に残っている。

 先日、ふとそのことを思い出して、「以前シングルで、子どもだけ産みたいって言ってたけど、今でも同じ?」と尋ねたところ、「今でも、お金さえあれば産みたい」という返事が戻ってきた。

 いわく、「もともと、好きな男性の子どもを産めるなら結婚しなくてもいいと考えていたが、最近はアラフォーを迎えて、家族を作りたい気持ちがさらに出てきた。けれども、自分の性格上、男性と一緒に暮すと、とことん世話をしてしまうこともわかっている。男性と子どもの、両方の世話はできないと思うから、ならば、子どもだけの方がよさそう……」というのが現時点での結論だという。

 産後、まったく家事育児の助けにならないどころか、むしろ手間ばかりかける夫のことを表す“産んだ覚えのない長男”という例えがあるけれども、配偶者が戦力になるどころか、世話ばかりかけるタイプの場合、我が子とふたりで生活するほうが、ずっとストレスがないことも想像ができるし、「結婚も、妊娠も」と二つのことを追い求めるよりも、いっそ結婚と妊娠とを切り離せば、後者の実現性が高まるのも確かだと思う。

 しかし「子どもが欲しい」という欲望は、結婚を望んでいる未婚女性、もしくは結婚している女性が口にする場合は正しいものとして肯定されるけれど、「結婚は望んでいない。けれども、子どもが欲しい」という願望はなぜか“エゴ”と蔑まれ、産めば産んだで「未婚の母」と呼ばれ、世間から冷たい眼差しを向けられる現状もある。

 一方で、厚生労働省が2015年に発表した「ひとり親家庭等の現状について」によると、1988年の母子世帯数は84.9万世帯だが、2011年には123.8万世帯へと増加している。また、母子世帯等調査の「ひとり親になった理由」に「未婚」を選択した女性は、1988年は3.6%だったのが2011年には7.8%と、約4%も増加している。

 どうやら、いまの日本でも少しずつ選択的シングルマザーが認められつつあるようだ……いや、認められているかどうかは関係がない。「選ぶ女性が増えている」というのが正しいだろう。

 しかし妊娠・出産は、女性ひとりでは出来ない。日本の病院では、精子提供は配偶者間の不妊治療のみ可能とされている。もちろん海外の精子バンクを利用することも不可能ではないけれど、なかなかハードルが高い。友人や周囲の男性を説得して精子を譲ってもらうという方法もあるが、そう手軽に提供してくれる相手が見つかるとも思えない。

 それならば、恋人や、もともと肉体関係のある男性のほうが、説得がしやすそうでもあるが、「あなたの子どもが欲しいけど、結婚する気はない」をどうやって通せばいいのか――そこで今回は、選択的シングルマザーとして子育て中の森田友美さん(仮名・40歳、販売員 家族構成:長女2歳)に話を聞いた。

 友美さんは30歳の頃に一度結婚し、37歳で離婚している。2歳の長女、朝香ちゃん(仮名)を出産したのは38歳という計算になるが、なぜ、わざわざ離婚してまで、選択的シングルマザーになることを選んだのだろうか。

「元夫とは、結婚してすぐに、子どもを作ろうと考えたんですけど、なかなかできなくて。不妊治療しようってことになって、6年間くらい。人工授精も試してきたんですが、お互いどっちに問題があるってわけではなかったのに、どうしてもできなかったんです」

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