「反文在寅」数十万人デモに“普通の人”が参加 「米国に見捨てられる」恐怖が後押し

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「民族の核」に突き進む南北朝鮮

――韓国はどうするのでしょうか。

鈴置: 文在寅政権は大声では言いませんが、「核を持つ北朝鮮と手を組めば『民族の核』を当てにできる」と考えています。2020年から韓国海軍は垂直発射管を持った3000トン級の潜水艦を実戦配備します。

 10月2日に北朝鮮はSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)を試射しました。ただ、弾道ミサイルを発射できる垂直発射管を備えた潜水艦はまだ、配備していません。建造中と北朝鮮は発表していますが、その技術・資金力から見て実際に運用できるかは怪しい。

 敵の核先制攻撃に耐え、核で反撃できる第2撃能力――弾道ミサイル発射型の潜水艦を持たねば、本当の意味で核武装国にはなれません。

 文在寅政権は北朝鮮に対し「南の弾道ミサイル発射型潜水艦と、北の核弾頭・ミサイルを組み合わせれば『民族の核』を完成できる」と持ちかけるつもりでしょう。

 すでに、北朝鮮は韓国に対し「北の核と南の経済力を合わせ、民族を興そう」と提案しています(『米韓同盟消滅』第1章第4節「『民族の核』に心躍らせる韓国人」参照)。

 文在寅政権は大統領以下、「米韓同盟こそが諸悪の根源」と考える人たちで占められています。「同盟廃棄」と「北の核武装維持」をセットで実現したい。そんな彼らにとって「同盟廃棄」に抵抗感を持たないトランプ大統領の登場は千載一遇のチャンスなのです。

保守への期待は禁物

――日本としては「文在寅退陣運動」に期待すべきですね。

鈴置: 韓国の核武装を阻止する観点からは期待できません。仮に、文在寅政権が退陣して保守が政権をとったとしても、彼らも核武装に動く可能性が高いからです。

 保守政権に対してはある程度、米国のグリップが効くでしょう。が、それでも在韓米軍が撤収すれば、韓国は強引に自前の核を持とうとするはずです。

 韓国が来年配備する弾道ミサイル潜水艦だって、自前の核をいつでも持てるよう、保守政権の時に建造を始めたのですから。

 米国の圧力で核武装を阻止できたとしてもその時、韓国は「中国の核の傘に入る」という選択をしかねない。保守を含め韓国人には、中国に逆らう根性はないのです。

 そもそも、「文在寅退陣」は容易ではない。左派だって9月28日、10月5日と「曺国擁護と文在寅支持を訴える集会」を開きました。10月3日の保守のデモほどではなかったようですが、かなりの人数を集めたのです。

 結局、韓国の保守に期待すべきではない。自分の国の安全保障に関わることを、他国の特定勢力に期待すること自体が危い発想と思います。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月7日掲載

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