小泉進次郎、PR戦略で墓穴 それでも応援する“リア充リベラル”の人たち

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とうとう鳩山氏にエールを送られる始末……

 そもそも、小泉氏が尊敬する政治家として挙げるのはジョン・F・ケネディ(JFK)だ。今年5月にワシントンを訪れ、かつて研究員として所属した戦略国際問題研究所(CSIS)で講演した際にも、日本の高齢化社会の問題への取り組みについて、ケネディが政策コピーに用いた「ニューフロンティア」を引用。「ケネディ大統領のように、私も日本国民を鼓舞し、全ての改革を実行するため、全力を尽くす覚悟だ(NNNニュースの和訳より)」などと、まるで首相就任時の演説のような怪気炎を上げてみせた。

 あらためて言うまでもなく、ケネディはアメリカの民主党から出馬して第35代大統領に就任。小泉氏が言及したニューフロンティア政策には、経済成長だけでなく、貧困や人種差別の解消も含めた“リベラル”な社会政策も含まれている。そして何より、JFKの祖父は港湾労働者からマサチューセッツ州議会議員に上り詰め、父親は金融業で莫大な資産を築いて初代証券取引委員会委員長や在英国大使なども歴任するなど、ケネディファミリーは名門中の名門。これぞ“リア充リベラルの権化”のような存在だろう。

 そういえば、日本にもケネディファミリーを彷彿とさせる財力がある政治家一家がいた。鳩山家だ。現当主で、政界引退後は中国・韓国に独自の土下座外交を繰り広げる鳩山由紀夫氏は、ツイッターで読むのもイタいお騒がせを続けている。実は、その鳩山氏が9月21日のツイッターで、小泉氏が処理水(ツイートでは汚染水)問題に直面した話題を次のように取り上げているのだ。

「小泉進次郎さんが環境大臣に就任して人気がとてもあると伺った。人気があることは良いことだ。小泉大臣、前大臣は汚染水を海に流すしかないと述べたが、海に流さないで処理する方法はあるということを肝に銘じて、人気に相応しい仕事をやっていただけるように期待します。」

 海洋放出せずに済む「方法」と言いながら根拠を示さない鳩山氏に、ネット民が失笑やツッコミを巻き起こしているのは相変わらずだが、リア充リベラルに擁護されてきた小泉氏も鳩山氏にエールを送られたとなれば、さすがに自分がどのような状況にいるのか気づき始めるかもしれない。

「老いる国のリーダー」への試金石

 さて、ここまでリア充リベラルについて辛辣に述べてきたが、成功する起業家も多く輩出する彼らは、イノベーションとの親和性があったりするので、ことに経済面では保守の人たちにはない強みがあるだろう。小泉氏が将来、首相になるかはわからないが、経済政策を提案していく上で、お友達の起業家たちの経験や知恵は間違いなく役に立つ。

 また、菅官房長官との文藝春秋の対談で、憲法改正に当たって小泉氏は「社会を分断しないアプローチ」の重要性を説いたことに、安倍政権下での改憲を急ぐ保守論壇では評判がすこぶる悪いが、筆者は必ずしも否定的ではない。

 以前、アゴラの勉強会で、野党の保守系議員から「憲法改正の国民投票で過半数に届かなければ、二度と改正はできなくなる」と危機感を示されたことがあるが、イギリスのブレグジット(欧州連合離脱)の国民投票における分断を見ても、社会の混乱を最小化することは、統治のテクニカル上、重要なことだ。その点、小泉氏のような“リベラル”な志向の政治家が自民党の前面に出たほうが、反対派の気勢を削いで、対話の機運を高めながらじわじわと憲法改正の方向にリードしやすいかもしれない。

 いずれにせよ、小泉氏の大臣職は始まったばかり。彼が老いる国のリーダーにふさわしい政治家なのかは、ときに民意にそぐわなくても必要な不人気政策について、勇気を持って説得し、粘り強く進めるかどうかで真価が決まる。

 元経産省官僚の政策コンサルタント、朝比奈一郎氏がアゴラへの寄稿で、小泉氏を戦前の宰相、近衛文麿のような“八方美人”ぶりから脱却できるかどうかを説いていた。しかし、自らのブランディングにばかりに余念が無く、処理水の海洋放出に反対する地元漁協に寄り添うだけの小泉氏を見ていると、懸念が募るばかりだ。

新田哲史(にった・てつじ)
アゴラ編集長。株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長。1975年、神奈川県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、読売新聞記者、PR会社を経て独立。15年に言論サイト「アゴラ」の編集長に就任。著書に宇佐美典也氏との共著『朝日新聞がなくなる日』(ワニブックス)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月6日掲載

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