小泉進次郎、PR戦略で墓穴 それでも応援する“リア充リベラル”の人たち

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保守層と“プア充”リベラルの嫌われ者

 一方、小泉氏がここまで袋叩きに遭う現象をよく見ていると、誰が叩き、誰が擁護に回っているかで、彼がどういう政治志向なのかも、ある程度、想像がついてくる。

 まずは保守層、ことに安倍政権を支持している人たちと小泉氏は、実に相性が悪い。先日、筆者は櫻井よしこ氏が主宰するインターネットテレビ「言論テレビ」の公開収録イベントの観覧に招待され、目玉ゲストの菅義偉官房長官を囲む政界談義を生で拝聴した。その際、聞き手が「小泉さんが次の首相だという人は誰もいない」と菅氏に水を向けると、満場の聴衆は大きく頷き、小泉入閣を後押しした菅氏がいまにも苦笑しそうな雰囲気だった。

 昨年の拙稿でも触れたが、安倍政権の保守系支持者は、小泉氏の父・純一郎氏が首相だった時代の構造改革路線に、否定的という政治的な伏線がある。ネットでも純一郎氏を、「拝金主義」「新自由主義」などと手厳しく非難する投稿はよく見かける。

 また、小泉純一郎政権が財務省寄りだったことも、成長重視で増税回避志向の経産省が主導する安倍政権のシンパたちは、お気に召さない。消費増税反対運動で敗北した彼らは、小泉氏が環境相に就任したことで、すでに欧州で先例がある炭素税導入を警戒し始めている。

 ちなみに、筆者が編集長を務める言論サイト「アゴラ」は保守タカ派に見られることもあるが、アベノミクスなどのリフレ政策には批判的で、執筆陣も小泉政権の改革路線を支持していた人たちが多いため、実は安倍シンパの保守層とは異なる。敢えて言えば、今のネットでは“絶滅危惧種”となった中道右派だろうか。

 アゴラ主宰の池田信夫氏も、小泉進次郎氏が首相になって国家破綻の危機に改革を断行したらどうなるかという近未来を描いた本(『もし小泉進次郎がフリードマンの資本主義と自由を読んだら』[日経BP])を出版したこともあるくらいで、筆者を含め、元々は彼の将来性に期待していた部分がある。しかしその一方で、アゴラは原発再稼働などリアルなエネルギー政策を一丁目一番地にしているだけに、処理水を巡る小泉氏の逃げ腰に対して結果的に批判の急先鋒となった次第だ。

 そして、保守層以外の小泉氏のアンチといえば、言うまでもなく反自民のリベラル。そのなかでも山本太郎氏の支持者に代表される反原発系の人たちは、処理水の海洋放水には徹底抗戦の構えを示している。

“孤立”する小泉氏を擁護するリア充リベラルたち

 ところが興味深いことに、この期に及んで小泉氏の擁護に“必死”な人たちがいる。それは、政治的にはリベラル志向ではあるものの憲法9条を神棚に祭り上げる絶対護憲信者のオールド左翼とも、反原発や貧困問題などで山本太郎や共産党に共鳴する「プア充(実生活が充実していないという意味のネットスラング)」のリベラルとも一線を画している人たちだ。社会的には勝ち組とも言える「リア充(プア充とは反対に、リアル=実生活が充実しているという意味)」なエリートリベラルである。

「セクシー発言」が炎上した直後の9月23日、小泉氏と親交のある社会学者の古市憲寿氏が、「セクシー発言」は引用であり、メディアの切り取りだとして、「全貌を知っているはずなのに一部を切り取って面白がるマスコミも、それを脊髄反射で批判するバカも、いつもの光景」(ツイッター)などと擁護した。

 古市氏といえば、著書「絶望の国の幸福な若者たち」(講談社+α文庫)で一世を風靡し、テレビでもおなじみ。近年は小説執筆にも熱心で、2回連続で芥川賞候補作として俎上にあげられ、かの津田大介氏が「新しいタイプの高等遊民」(ツイッター:2016年6月20日)と評するなど、典型的なリア充リベラルの旗手と言えるだろう。

 また、小泉氏のブレーンのひとりに博報堂出身のクリエイターがいると先述したが、それが昨年の拙稿で紹介した高木新平氏。一連の小泉バッシングを受けて、フェイスブックに投稿し、「メディアはステーキやらセクシーやら報道して進次郎ネタでしょうもないView稼ぎ、“識者”らは答弁に具体性乏しいとドヤ顔批評」などと、小泉批判のメディアや専門家をくさした。

 高木氏は31歳だが、博報堂を新卒1年で退社し、フリーランス活動は長い。20代半ばでネット選挙解禁運動やシェアハウスブームを仕掛け、若干27歳で制作会社を創業。DeNAの自動運転プロジェクトや卓球日本代表のブランディングを手がけるなど、こちらもなかなかのリア充リベラルぶりだ。

 そして、ドワンゴ社長の夏野剛氏だ。Abema TVの報道番組(9月23日)が小泉氏の「セクシー発言」を特集した際、「全く失言ではない。いいじゃないかと」とほとんど開き直り気味に擁護。「騒いでいるネット民は影響力もない」とネット企業の社長とは思えないほど、ネットユーザーを軽んじたかと思えば、「これでまた60歳以上の女性の有権者をわし掴みにしたと思うし、今後のキャリアの中で得点を稼いだ」とまで言い切った。

 夏野氏はNTTドコモでiモード事業の中心的存在となったことでおなじみ。その実績を引っ提げて慶應大学の特別招聘教授に就任し、SBIホールディングス、ぴあ、セガサミーホールディングス、グリーなど数々の社外取締役を歴任。実業活動の一方で、ニコニコ超会議の「リベラル再生会議」に何度も出演して、旧民主党の不甲斐なさに辛口のエールを送るなど、まさにリア充リベラルの“大御所”とも呼べる存在だ。

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