多発する「観光公害」に打つ手はあるか 総量規制と誘導対策だけでは非現実的

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バルセロナでは排斥デモも

 日本に先んじて、すでに諸外国の世界的観光地の多くは、観光公害に苦しんでおり、2つのアプローチによる対策が講じられているという。

 そのひとつが、観光客の数を抑えるために入場制限を設ける「総量規制」。ペルーのマチュピチュ、インドのタージマハル、ガラパゴス諸島などで行われている方策だ。

 もうひとつは、観光客の全体数を抑えるのではなく、交通規制などを行って、一極集中しないよう分散化を図る「誘導対策」だ。

 ただ、これらの対策は小規模な観光名所なら効果的であっても、京都などの大きな街の場合、こうした規制や誘導のみで全て解決しようとするのは非現実的だ。後藤氏も「観光客数が増え続けている街での対策は難しい」と嘆く。

「一番被害が大きいとされる京都に限らず、日本の観光地は、観光客を受け入れる環境面において問題があります。敷地の制約上、屋内に滞留できるスペースを持てないお店が狭い歩道沿いに増えれば、人は車道にはみ出してしまいます。環境に適した観光産業のあり方を模索し、誘導・管理するという意識が不十分であったことは否めません。お客さんを増やすことへの意識はありましたが、どのような客層の人に来てもらい、この場所でどのように過ごし消費して欲しいのか、多くの観光地ではその明確なイメージを打ち出せていません」

 続けて後藤氏は、まだ観光公害に悩んでいない地域も、次のような対策が必要だという。

「客数だけを増やすのではなく、街を磨き、その街の価値に見合った対価として観光客が支払う金額の単価を上げていく。そういった考えが、この先より必要になってくるのではないでしょうか」

 年間8200万人の外国人観光客を誇る国スペインでも、観光公害が深刻化している。

 特にスペイン有数の観光地バルセロナは、人口約160万人にたいして、年間約3200万人もの観光客が訪れている上、違法民泊の問題も絡み、騒音に頭を悩ませる住民も後を絶たないとの報道もある。

 2016年以降、限界に達したバルセロナ市民たちは、町中で「外国人観光客は帰れ!」と書かれたプラカードを掲げて排斥デモを行うなど、前代未聞の出来事も起きている。

 日本にとっても、決して対岸の火事ではないのだ。

取材・文/福田晃広(清談社)

2019年10月5日掲載

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