“ガラケー女”呼ばわりに見る「忖度」の終わり(中川淳一郎)
今年8月に発生した「あおり運転殴打事件」で、「あおり男」と共に話題となったのが「ガラケー女」です。男が怒っている脇で無表情でガラケーを被害者の車の方に向けて撮影をする帽子・サングラスのあの女ですね。
この時、各種メディアは容赦なく「ガラケー女」の呼称を使いまくりましたが、7年程前までメディアは意図的に「ガラケー」という言葉を使いませんでした。ガラケーとは「ガラパゴス携帯」の略で、日本固有の独自の進化を遂げた、海外では使われない携帯電話を意味します。
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では当時はなんと呼んでいたかといえば「フィーチャーフォン」です。「feature=特徴」で、「主に通話機能を重視した特徴を持つ」として「スマートフォン」との違いを表現していたのです。スマホと異なり色々なことはできないけど、通話については便利だゾ! すげーだろ! を意味する言葉だったのです。
世の人々が「ガラケー」と嘲笑の意味合いを込めて呼ぶ中、メディアやIT系のジャーナリストは「フィーチャーフォン」と言い続けていた。それは、メディアは携帯電話キャリア及びメーカーから広告をもらい、ジャーナリストからすれば大事な取材対象者に忖度をしていたからに他ならない。
大切な方々が作っている商品を「国内でしか流通していないガラパゴス商品www」なんて一般人が自由に言っている中、彼らは「いや、フィーチャーフォンにも優れた点はあるのです、キリッ」という姿勢をとり続けていたのです。
しかし、世の中の携帯端末がほぼスマホになり、キャリアもメーカーもガラケーを重視しなくなって「チッ、さっさと全員スマホにしてくれよ」なんて思っているからこそ、メディアも書き手も「ガラケー」と平気で使えるようになったのです。
一方でまだ変えられなそうなのが「新ジャンル」です。ビール系飲料の場合、税率に影響する麦芽の含有率の高さにより「ビール」→「発泡酒」→「新ジャンル」となっていますが、かつて「新ジャンル」は「第3のビール」とメディアからは呼ばれていました。しかし「第3」だと「劣化版ビール」みたいな印象になることをメーカーが嫌がったのか、いつしか「新ジャンル」に変わったのです。これらはその安さと味の改良によりよく売れているため、ガラケーとは異なりメディアも「やっぱ『第3のビール』の方が分かりやすくね?」と言える状況にはありません。
というかそもそも「発泡酒」ってなんだよ! ハイボールだってチューハイだって「発泡酒」だろ! 当初発泡酒を出さなかった某メーカーの社長は「ビールのまがいもの」と他社を批判していましたが、結局彼らも出した。「まがいもの発言」はなかったことにし、発泡酒を次々と開発していったのです。
若者が主催するイベントやパーティーなどに行くと、「ビール用意しています」と言っても「新ジャンル」しかないこともあり、オッサンにはキツいです……。ちなみに、某発泡酒のCM制作関係者から聞いたのですが、泡立ち具合が悪いのと味がビールに劣っていたため俳優からいい表情が出ず、実際は同社のビールを使って撮影したそうです。