文科省の「英語入試改革」に校長たちから怒りの声 詳細は不透明、離島の高校は不利に

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離島の学校のハードル

 それに関し、伊豆諸島は神津(こうづ)島の都立神津高校で英語を教える小林源地教諭がいう。

「英検から来年春から夏の受験予約の連絡が来て、10月7日が回答期限です。しかし、それぞれの民間試験の特徴などわからない部分が多く、どんな基準でどの試験を選べばいいか、見当もつかない状況です」

 都市部の高校生なら、早いうちに複数の試験をためしに受ける手もあろうが、離島は事情が違う。

「どの試験も、都心部に出て受けるしかありませんが、フェリーだと港区の竹芝埠頭まで10時間、ジェット船で3時間半、飛行機だと調布まで40分で、往復料金は8千円から1万3千円ほど。宿泊費や受験料を入れると最低でも2万円はかかります。船も飛行機も天候次第で運休するので前乗りも必要で、さらにお金がかかる。ただでさえセンター試験に2次試験、私大受験で数十万円かかる家庭もあるなか、さらに数万円の負担は重い」

 ちなみに各試験の受験料は約6千円から、高いものは2万数千円もする。小林教諭の話を続けると、

「今後、島外の高校に進学したがる子供が増えるでしょうし、島留学という制度で、島外からの生徒誘致にも力を入れているのに、そちらにも悪影響が出る。自民党が掲げる地方創生に逆行していると思います」

 鹿児島県立与論高校の西中間明弘教頭も、

「うちは離島の高校なので、もともと受験に不利ですが、英語の民間試験が始まれば格差がさらに広がり、学校にとっても向かい風になるのでは、と危惧します」

 と語る。やはり那覇までフェリーで5時間。おいそれと試験は受けられない。

「不利な条件の高校は特例措置で、高2の試験結果も使えますが、学力がつくのは高3であることを考えると、現実的ではありません。現時点で各試験の特徴もわからず、比較すらできませんが、英検からは予約の案内がきています。しかし、予約してしまうと、受けなくても予約金3千円は返ってこないのです」

(2)へつづく

週刊新潮 2019年9月26日号掲載

特集「全国の高校から憤怒と悲鳴! 文科省の『英語入試改革』に校長たちが『理由ある反抗』」より

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