文科省の「英語入試改革」に校長たちから怒りの声 詳細は不透明、離島の高校は不利に

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文科省の「英語入試改革」に校長たちが「理由ある反抗」(1/2)

 受験生の将来を左右する入試改革の見切り発車など、あってはならないが、英語に導入される民間試験は、7カ月後に始まるというのに、日時や場所さえまともに決まっていない。それでも突っ走ろうとする文科省に、全国の高校の校長たちの怒るまいことか。

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 なぜ大学入試を改革するのか。その理由は、大学で学ぶに相応しい学力を、より正確に、公正に測れるようにするため。これに尽きるだろう。2020年度すなわち、いまの高校2年生以降が対象の大学入試改革も、同じ目的で始められるのは、いうまでもない。

 来る改革では、大学入試センター試験に代わる共通テストで、国語と数学に記述式問題が加わり、さらに英語には民間試験が導入される。そこまではお聞き及びの方も多いと思うが、ことに英語の民間試験をめぐって、不協和音が急に広がっている。むろん、どんな改革にも抵抗勢力はつきものだが、そう切り捨てるにしては、聞こえてくる声が重いのである。

「7月25日、全国高等学校長協会として、英語の民間試験活用への懸念を早急に解消するよう求める要望書を文科省に提出。今月10日にも再提出しました」

 と語るのは、全高長会長を務める都立西高校の萩原聡校長で、要望書の重さについて、こう説く。

「全高長は原則、文科省の施策を進める立場で、こうした要望書を出すのは1989年、センター試験導入の際、実施時期を12月から1月に変更するように求めて以来、30年ぶりです。今回ばかりは現場からの“厳しすぎる”という声があまりに多い。数年前から計画が進められ、もう導入まで7カ月を切っているにもかかわらず、中身がまったく詰まっておらず、現場は非常に混乱しています」

 民間試験がどのように使われるか、簡単に説明しておくと、活用される試験はケンブリッジ英語検定、実用英語技能検定(英検)、GTEC、IELTS、TEAP、TAEP CBT、TOEFL iBTの七つ。これを受験年度の4~12月に2回まで受け、その成績が志望大学に提出される、というものである。

「しかし、実施団体は、試験日も試験を行う場所も明らかにしていません」

 と、萩原校長が続ける。

「大学入試センターは8月上旬の時点で、試験の実施日や会場、データのやりとり等についての契約を、試験を実施する7団体中3団体としか結べていませんでした。9月に英検と契約したものの、3団体とはまだなにも決めていません。大学も3割が、民間試験の使い方を公表していませんが、ただ、各試験の信頼性や妥当性がわからない以上、どう使うか決められないという事情もあります。そして、これらすべてを統括する文科省は大学に“受験内容に大きな変更がある場合は2年前までに周知すること”というルールを課しているのに、今回はまったく指導できていません」

 そうである以上、

「いったん立ち止まってほしい。20年度入試については、ひとまず導入を取りやめ、その後システムを改善できる見通しが立てば延期し、可能性がなければ中止してほしい」

 と訴える萩原校長。

「住んでいる地域や経済状況によって不公平が生じるのは、大きな問題」

 とも指摘する。

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