ジャニーズ・吉本闇営業問題……データで読み解く“芸能ネタ”とニュース番組の関係

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 日照不足・猛暑・水害・台風被害が続いた令和元年の夏。 実は例年になく、芸能ネタも各局のニュースを賑わせた。

 ジャニー喜多川の死去から始まり、ジャニーズ事務所の公取問題、吉本興業の激震、京都アニメーションの放火事件、小泉進次郎と滝川クリステルの結婚会見など。これだけ芸能・エンタメ関係のニュースが、報道番組で頻繁に放送された時期は珍しい。

 ではこの3カ月間で、ニュースの見られ方はどう変わったのだろうか。データで検証してみた。

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数字が上がった『スッキリ』

 日本テレビの情報番組『スッキリ』は、局アナの水卜麻美の他、加藤浩次と近藤春奈がをMCを務め、天の声を山里亮太が担当している。ちなみに水卜アナを除く3人は、いずれも吉本興業の芸人だ。

 芸能ネタが目白押しで、特に吉本興業も多くのニュースを提供したこの夏。同社所属タレントが3人も出演する『スッキリ』は、この間に視聴率を大きく上げた。裏の他局ワイドショーと明暗が大きく分かれたのである。

 例えば山里亮太と蒼井優の結婚会見があった6月第1週、属性別の個人視聴率を調べるスイッチ・メディア・ラボのデータによれば、一週間の平均世帯視聴率は1%ほど上がった(図1)。

 そして7月に入ると、ジャニー喜多川氏が亡くなり、嵐など所属タレントの言動が大きく取り上げられた。その後ジャニーズ事務所を、公正取引委員会が独禁法違反の恐れがあると注意した。さらに京都アニメーションが放火され、35人が死亡・34人が負傷する大事件が起こった。

 吉本興業でもゴタゴタが続いた。闇営業問題を巡り、宮迫博之や田村亮が謝罪会見を行った。その直後には、岡本明彦社長も会見したが、事態は容易に収拾しなかった。

 一連の芸能ネタにより、当事者が出演する『スッキリ』は、視聴率が7月中に右肩上がりとなった。これにより全世代に視聴習慣がつき、全体として月平均の視聴率が3カ月連続で上昇した。

芸能ネタで『news zero』も上昇

『news zero』は同じ日テレの報道番組。この番組も『スッキリ』と同じように、芸能関連のネタでよく見られるようになっていた。

 今の『news zero』は、メインキャスターが有働由美子、月曜キャスターが櫻井翔、お天気キャスターをタレントの河西歩果が務めるなど、若年層を意識した柔らか目な報道番組だ。この結果として、櫻井翔が出る月曜が一週間の中で際立って良く見られる。そして火・水と視聴率が落ちるパターンが一般的だ。

 ところがこの夏、芸能関連のニュースがある日は、数字が跳ね上がった。例えばジャニー喜多川氏が亡くなった7月9日は、通常の火曜日より、番組放送時間の半分以上を見た割合を表す“接触率”が急伸した。京アニ放火事件とジャニーズ事務所の公取問題が重なった7月18日も、ふだんの木曜より1・5倍近い数字だった(図2)。

 他にも京アニ事件続報と吉本興行の社長会見があった7月22日や、小泉進次郎・滝川クリステルの結婚発表があった8月7日は、いつもより数字が跳ね上がっている(以上は、約48万台(関東地区)のネット接続テレビを対象とした視聴データを分析するインテージ社の「Media Gauge TV」から)。

 では7月9日の『news zero』を、毎分の接触率や流入・流出(番組を途中から見始める人、見るのを辞める人)の状況で分析してみよう。

 ジャニー氏死亡の情報が解禁された23時30分から、『news zero』だけが速報として詳しく伝え続けた。嵐やSMAPなど人気アイドルの映像も使われた。このパートで大量の流入が続き、接触率は2%以上も上昇した(図3)。SNSなどの口コミで、チャンネルを合わせた人が多かったのだろう。ちなみに同時間の『NEWS23』は、ジャニー氏の扱いが小さく接触率はあまり動かなかった。

『NEWS23』は硬派で上昇

 次に『NEWS23』は、この夏どんな見られ方をしていたか。まず、インテージ「Media Gauge TV」を元に作成した〈図2〉と〈図4〉を見比べてもらいたい。『news zero』の接触率が概ね2万~2万5000台(図2)あるのに対し、『NEWS23』は8000台~1万台(図4)と、目につくのは『news zero』の半分ほどしかない点だ。さらに直前10日間のうち3回に1回ほど見る「ミドル視聴者」で5分の1以下、2回に1回以上見る「ヘビー視聴者」だと10分の1と極端に少ない。明らかに固定客の少なさが、総接触率の明暗を分けている。

 ただし過去10回で一度も見に来たことのない「ゼロ視聴者」だけは大差がない。偶然あるいは興味のあるニュースのために見た新規の視聴者は、どのニュースも大差はないようで、彼らを定着させられない点が『NEWS23』の課題と言えよう。

 もう一点、7月以降で通常より接触率が跳ね上がった回のニュース内容も、両番組では差があった。

 ジャニーズ公取事件や京アニ放火事件では、ふだんより2割ほど視聴者が増えていた。ただし日本郵政のかんぽ不正・日韓関係・九州での大雨・京急踏切事故など、芸能ネタでない硬派ニュースの方が、接触率の上昇が大きい。

 どうやら『NEWS23』を見る視聴者のニーズは、芸能ネタより硬派なネタをきっちり伝える方にあるようだ。

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