103歳の画家「入江一子さん」圧迫骨折から復活の秘訣は 【達者な100歳にはワケがある】

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「今でも上達している」

「この歳になれば寝たきりになるところ、お婆ちゃんは絵を描くと元気になるんですよ。家に帰ればもっと絵が描ける。それが退院への励みになったんでしょう。今もヘルパーさんのお世話にはなっていますが、基本的には一人暮らし。自分の絵を出品する展覧会では、集まった人たちと記念写真を撮りますからね。周りの目を意識してシャキッとしないといけないと思うからか、車イスは使わずシルバーカーを自分で押して、歩いて会場へ行っています。普段は散歩なんてほとんどしませんが、絵を描くのは意外と体力仕事ですから、日頃から身体が鍛えられているんだと思います」(同)

 1年の間に、入江さんは一辺が1・5メートルを超えるような大作を展覧会用に描き上げるほか、商品として100枚ほどの絵も仕上げているという。東京・阿佐谷の「入江一子シルクロード記念館(http://iriekazuko.com/)」では、その業績の一端に触れることができる。

 同館のスタッフである吉岡範子さん(74)が言う。

「先生は常に絵筆を握っているからか、ペットボトルのふたを簡単に開けてしまうんです。私がやるよりよっぽど早くて握力が凄い。絵を描く時は合間に休憩するためベッドとアトリエを何往復もするのですが、それも自分でシルバーカーを押して歩く。それがよい運動になっているんだと思いますね」

 早朝5時に目を覚ますと、入江さんは真っ先にキャンバスに向かう。朝昼晩に食卓へ顔を出す以外は、ほとんどが創作の時間に費やされ、夜10時に就寝する毎日を送っているそうだ。

 入江さんはこうも言う。

「さすがに体力の限度もありますから、1時間くらい描いたら1時間はベッドで休む。その繰り返しですが、今でも自分の絵が上達していると感じるんです。小さい頃から描いているとそれが分かると言いますか。25歳の時に満州で見た夕日と、59歳の時にイスタンブールで目にした真っ赤な朝焼けがシルクロードを描く出発点。言葉に言い表せない光景が一生脳裏に焼き付いている。だから私の絵は色彩を大事にしています。色彩画家として歳をとる毎に絵が鮮やかになっていると思っています」

週刊新潮 2019年9月19日号掲載

特集「『現役』だからめでたい! 達者な『百歳』にはワケがある」より

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