「鳥谷」引退勧告で迷走つづく阪神 岡田、川藤“大物OB”はどうみているか
それは、いきなりの“造反劇”だった。
二軍調整から帰ってきたばかりの阪神・ソラーテが、9月6日の対広島戦(マツダスタジアム)を前にして「モチベーションが上がらない」と首脳陣に訴えて一軍昇格を拒否、同9日に解雇されるという“前代未聞”の騒動が勃発した。
ソラーテは、クライマックスシリーズ進出の起爆剤として7月に来日した新外国人。デビュー戦の巨人戦では勝負を決めるホームランを放ち、メジャー時代の「セクシータイム」という愛称も浸透し始めたばかりだった。
「ソラーテの本職は二塁手でしたが、来日直後の一軍戦では、チーム事情もあり外野を含めてポジションをたらい回しされていました。失策を連発したうえ、打撃も不振を極めて、8月19日に2軍に降格させられた。2軍戦ではホームランを放つなど結果を出していましたが、一軍合流後に『レギュラー扱いはしない』と首脳陣から通告されて、やる気がなくなったようです」(阪神担当記者)
突然、“職場放棄”を犯したソラーテは批判されてしかるべきだが、見切りをつけられた球団側にも、選手の扱い方に問題があったのではないか。さらに、ファンに衝撃を与えたのは、「造反劇」からさかのぼること数日前。ベテランの鳥谷敬に対して球団側が「引退勧告」を行っていたことだ。
「鳥谷は2000本安打を達成し、シーズン最多打点など数多くの記録を残しているほか、2005年のリーグ優勝にも貢献しています。そんな功労者である鳥谷に対して、近年は低迷していたとはいえ、球団は“三行半”を突きつけてしまったのです」(同)
鳥谷は現役続行を希望しているため、今季限りでタテジマのユニフォームを脱ぐことは決まっている。鳥谷と親しい井口資仁監督が率いるロッテが移籍先の有力候補として浮上するなど、現役続行の道は開けそうだ。
とはいえ、阪神の一連の対応はあまりに冷たすぎるのではないかとファンからも批判が続出している。大物OBは、この問題についてどう考えているのか、見解を聞いてみた。
「(鳥谷の)全盛期とはもちろん違うと思うけど、チームに必要かどうかを判断するのはあくまで球団。プロ野球選手として通用する技術かあるかどうか、という点も周囲は何も言えない。すべては阪神球団が決めること。それに関してはOBも口を挟めない」(川藤幸三氏)
「力が落ちている部分はもちろんあるけど、だからといって引退というようなレベルでもないと思う。球団の事情があるわけだから、何も言うことはない。まあ、本人が現役を続けたいようだから、場所が見つかるといいな」(岡田彰布氏)
監督として鳥谷の全盛期を知る岡田氏のコメントからは「まだ引退には早い」というニュアンスが感じ取れた。岡田氏自身も長年貢献した阪神に自由契約にされ、オリックスへ移籍した経験もあるだけに、どこか表情は複雑そうだった。
さらに、9月1日には「ミスタータイガース」こと掛布雅之・オーナー付シニア・エグゼクティブ・アドバイザー(SEA)が今季限りで退団することも明らかになった。契約満了に伴うとのことだが、16年の二軍監督に就任した際には、一軍監督の就任待望論も強かった。掛布氏本人も「いつかは……」という思いを持っていたが、結果として、数年間、SEAという「肩書き」を与えられただけで終わってしまった。
「引退勧告」に「造反劇」、「ミスタータイガースの退団」……名門球団はいったいどこに向かおうとしているのだろうか。