「認知の歪み」が諸悪の根源だった 医療少年院で精神科医が受けた衝撃

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医療少年院での「生涯忘れ得ない衝撃的な体験」

 医療少年院に勤務してすぐ、宮口氏は少年院の中で最も手がかかっていた少年の診察を頼まれた。

「少年院で『手がかかる』というのは、学校で『手がかかる』というのとは次元が違います。その少年は社会で暴行・傷害事件を起こし入院してきました。少年院の中でも粗暴行為を何度も起こし、教官の指示にも従わず、保護室に何度も入れられている少年でした。
 ちょっとしたことでキレて机や椅子を投げ飛ばし、強化ガラスにヒビが入るほどでした。いったん部屋で暴れると非常ベルが鳴り、50人はいる職員全員がそこに駆け付け少年を押さえつけて制圧します。

 制圧された少年は、トイレしかない保護室に入れられ大人しくなるまで出てこられません。そういったことを週に2回くらい繰り返していた少年でした」

 そんな情報があったので、宮口氏は内心びくびくしながら診察にのぞんだ。ところが、実際に部屋に入ってきたのは、小柄で痩せていておとなしそうな表情の、無口な少年だった。質問にも「はい」「いいえ」くらいしか答えない。

 あまり会話が進まないので、宮口氏は診察中のルーチンとして行っていた「Rey複雑図形の模写」という課題をやらせてみた。下のような複雑な図形を見ながら、手元の紙に写すという課題である。認知症患者に使用したり、子どもの視覚認知の力や写す際の計画力などをみたりすることができるという。(図1)

 意外にも少年はすんなりと課題に一生懸命取り組んでくれた。

 が、そこで宮口氏は「生涯忘れ得ない衝撃的な体験」をすることになる。

 少年の写した絵は、次のようなものだったのだ。(図2)

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