茂木外相、河野防衛相…内閣改造ではっきり分かった首相候補の必須科目は“外交と防衛”

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外交と防衛の一体化

 改造でもう一点注目したいのが、河野の外務大臣から防衛大臣への横滑りだ。安倍は記者会見で「外務大臣を務めた河野さんに、次は国防を担ってもらいます。これまで世界中を回った経験を糧に、ダイナミックな安全保障政策を展開してもらいたいと考えています」と述べて、期待感を示した。外務大臣として七十七か国・地域(延べ百二十二カ国・地域)を訪れた経験が、防衛大臣としても生かせるという考えが滲む。外交と防衛を一体化させることで、厳しい国際情勢を乗り切ろうということだ。

 安倍が両ポストの連結に意を用いたのは、これが初めてではない。稲田辞任後に防衛大臣を兼務させたのが、岸田文雄外務大臣だったのだ。兼務は短期間だったとはいえ、事務代理を除けば外務と防衛の閣僚を同じ人物が兼務するのは史上初めてだった。安全保障に携わるという点で、外務省と防衛省の役割は共通している。にもかかわらず外務省と防衛省の関係――内部では「外防関係」と言い習わす――はかつて円滑ではなかった。

 外防関係の円滑化を制度的に担保し、外交安保政策における首相の指導力強化を図り、米国を範として平成二十五(二〇一三)年に創設されたのが国家安全保障会議(National Security Council:NSC)だ。第一次安倍政権でも創設が試みられたが、安倍再登板によって実現した格好だ。NSCと同時に設置された国家安全保障局(National Security Secretariat :NSS)には、内閣官房副長官補を兼任する形で局次長として、外務省出身の兼原信克と防衛省出身の前田哲が任用されており、外防両省のバランスを取る形の人事配置だ。なお今回の改造にあわせて初代局長の谷内正太郎が退任し、警察庁出身の北村滋前内閣情報官が後任となった。昨年七月にはベトナムで北朝鮮の金聖恵(キム・ソンヘ)統一戦線策略室長と接触したと米紙ワシントン・ポストで報じられており、日朝関係を見据えての人事なのだろう。

 外務防衛両大臣にポスト安倍候補がそれぞれ配されたのは、国際情勢が厳しさを増し、外交安全保障の重要性が高まる中では、自然の流れといえよう。外務大臣の防衛大臣への横滑りも併せて考えれば、外交安保の一体的な政策展開の必要性はもはや自明であり、いまや首相候補にとって、外交と安保は「必須科目」ということだろう。(敬称略)

村上政俊(むらかみ・まさとし)
1983年大阪市生まれ。東京大学法学部卒。外務省に入り、国際情報統括官組織、在中国、在英国大使館外交官補を経て、12年から14年まで衆議院議員。現在は同志社大学、皇學館大学で講師を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月18日掲載

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