清原超えで「村上宗隆」は新人王確実 広陵“中村フィーバー”の陰に隠れた高校時代
高校時代は“捕手の村上”
つい先日、東京ヤクルトスワローズの小川淳司監督と宮本慎也ヘッドコーチの今季限りでの退任が正式に発表された。現在チームはぶっちぎりの最下位に沈んでいるだけにいたしかたのない決断ではあるが、そんな2人の“置き土産”とでもいうべき活躍を見せている若武者がいる。今季まだ高卒2年目となる村上宗隆内野手だ。
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2019年の今シーズン、オープン戦から結果を残し、自身初となる開幕スタメンを勝ち取ると、その打棒が爆発。順調に本塁打数を伸ばしていたが、ついに9月4日には、これまで清原和博(元・西武など)がルーキーイヤーの86年にマークした10代最多本塁打記録である31号を抜く32号を放ち、記録を33年ぶりに更新。さらに同じ試合では打点も90に達し、53年に中西太(元・西鉄)が記録した高卒2年目以内での最多打点記録86もあっさりと抜き去ってしまった。まさに今シーズンのセ・リーグ新人王への道をばく進している最中なのである。
実は村上は2017年のドラフト1位選手。当然、入団時からかなりの期待をかけられていたわけだ。だが、今季のこのいきなりのブレイクに他球団のファンからすれば、“何者?”と思う人のほうが多いのではないだろうか。
しかし高校野球ファンからすれば、村上はドラフトの前から高評価され続けていて、当たり前のように知っている“怪物スラッガー”であった。そんな村上宗隆は高校時代、どのような選手だったのか、その足跡を辿ってみよう。
小学4年生のときから本館的に野球を始めた村上は中学時代にリトルシニアで現在のように野手ではなく、まず捕手として頭角を現した。
15年に高校進学し、熊本の強豪・九州学院に入学すると、直後の春の九州大会からさっそく一塁手としてレギュラーの座を獲得している。しかも初戦の佐世保実(長崎)戦からいきなり4番打者として起用されているのだ。
この試合ではチームは3-4と逆転負けを喫しているが、村上自身は初回の第1打席で三遊間突破のタイムリーヒットを放ち、鮮烈な公式戦デビューを飾っている。
甲子園への本番となった夏の県大会でも当然のように4番・ファーストで出場。その初戦で熊本の高校野球ファンの度肝を抜く活躍を見せる。
東稜との一戦。なんと初回に回ってきた第1打席でいきなりの満塁弾。さらに第3打席ではライトフェンスを直撃する鋭いライナー性の三塁打、最終打席でもセンター前へのヒットを放ち、4打数3安打の固め打ち。あと二塁打が出ればサイクルヒット達成という大暴れでチームも8-0の7回コールド勝ちに貢献したのである。
しかも夏の県予選初打席で放ったグランドスラム弾は中堅までの距離が約121.9メートルと国際試合開催規格を有する、プロ野球界でも“本塁打が出にくい野球場”として知られる、藤崎台球場のバックスクリーン左の芝生席に叩き込んだ当たり=推定飛距離にして120メートル超だったと書けば、その長距離砲としての素質がいかに高いかということが改めて分かるのではないだろうか。
結果的にこの1年生の夏の県予選では全6試合で4番を務め、22打数9安打で打率4割9厘、1本塁打、8打点をマーク。チームを5年ぶりの夏の甲子園へと導く原動力となったのであった。
こうして県予選では1年生4番として華々しいデビューを飾った村上。だが、本番の夏の甲子園で全国レベルの壁の厚さを痛感することとなる。
その注目の初戦の遊学館(石川)との試合。県予選同様に4番・ファーストを任されたが、打っては4打数無安打。特に3回表の2死三塁のチャンスの場面では三塁ゴロ、6回表には鋭いライナーを放ったが、結果的にはセンターフライに終わってしまった。守っても3回裏に2失策を犯し、決勝点を献上……と散々な内容でチームも3-5の逆転負けで初戦敗退。村上は力を出し切れないままわずか1試合で甲子園を去ることとなったのだった。
そしてこれが、村上にとって高校3年間で唯一の甲子園となってしまう。というのも、ここからの2年間、県内には全国優勝レベルの強敵が存在したからだ。
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