韓国は元々中国の属国――米国で公然と語られ始めた米韓同盟の本質的な弱点
反米デモを呼びかけた大統領補佐官
――米国の変心を韓国人はどう見ているのですか?
鈴置: 保守系紙の朝鮮日報はグリーン発言を報じました。「米国は米国の同盟国の中で韓国がもっとも抜けやすいと見ている」(9月7日、韓国語版)です。「冊封体制」「属国」という単語は使いませんでしたが、米国人の同盟への疑念を伝えました。
朝鮮日報は社説でも連日のように「左派政権が引き起こした安全保障の危機」を訴えます。しかし「インド太平洋戦略に加わろう」とは書かない。中国が怖いのです。保守はおろおろしながら、米国の韓国離れを見ているだけなのです。
一方、反米左派。願ってもないチャンスと小躍りしていているはずです。韓国側から同盟破棄を言い出せば、青瓦台(大統領官邸)は反対するデモ隊に取り囲まれるでしょう。それが米国側から破棄を言いだしてくれそうになってきたのですから。
大統領・統一外交安保特別補佐官の文正仁(ムン・ジョンイン)氏が9月9日、高麗大学での講演会で反米デモを呼びかけました。「我々はなぜ、米国に忖度せねばならないのか」との学生の質問に対し、以下のように語りました。
朝鮮日報の「文正仁、『南北関係の最大の障害は国連軍司令部』」(9月10日、韓国語版)から引用します。
・駐韓米国大使が韓国政府の意向を強力に(ワシントンに)伝えるよりも、米政府の意思を韓国に伝え韓国政府の意見を変えることが当たり前になっている。
・「国連安保理の制裁対象ではない金剛山観光事業をなぜ実施しないのか」と青瓦台前で、米国大使館前でデモする市民の行動だけが(米韓関係のあり方を)変えることができる。
左派を結集するための「反米」
――大統領補佐官が反米デモを呼びかけるとは……。
鈴置: 米国が韓国に嫌気したこの機に、同盟を揺さぶるつもりでしょう。米国大使館をデモ隊が取り囲めば、米国人の反韓感情が高まるのは確実です。
また今は、内政上も「反米」のグッド・タイミングです。韓国では左派と保守の全面衝突が始まりました。
文在寅大統領は側近中の側近、曺国(チョ・グッ)ソウル大学教授を法務部長官に任命。不正の塊(かたまり)とメディアに報じられている人ですから、保守はこれを激しく批判し、政権打倒に動いています。
「米大使館へデモせよ」との大統領特別補佐官による扇動は、保守との決戦に備え、「反米」を旗印に左派を結集する狙いもあるのでしょう。
すでに空洞化した米韓同盟。両国のお家の事情が加わって、その崩落が早まりそうです。
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