韓国は元々中国の属国――米国で公然と語られ始めた米韓同盟の本質的な弱点
自称「親米派」こそ曲者
――韓国には親米保守もいるのでは?
鈴置: この人たちこそが曲者です。口では親米を唱えます。でも、その多くが心の奥底では、自分たちの運命を握る米国に対し、どす黒い反感を持っているのです。
軍や経済界は親米保守の牙城と見られがちです。が、いざという時、ここからも反米感情が噴出します(『米韓同盟消滅』第1章第2節「『根腐れ』は20世紀末から始まっていた」参照)。
その複雑な思いはフィリピンの親米派と共通します。駐比大使を務めたアマコスト氏だけあって、韓国人の心根も見抜いているのです。
『やがて中国の崩壊が始まる』の著者、ゴードン・チャン(Gordon Chang)氏が『Losing South Korea』を2019年3月に出版しています。
韓国のナショナリズムを背景に米韓同盟が消滅に向かう、という予想です。文在寅政権の「特殊性」は強調していますが。
いまだに普通の米国人は「韓国はこちら側の国」と思い込んでいる。しかし専門家は「中国の元属国」「反米感情の根深さ」「高揚するナショナリズム」といった観点から「崩壊する同盟」を直視し始めた。これが次第に米世論を変えるでしょう。
何か象徴的な事件――例えば2015年3月の駐韓米大使襲撃事件のようなことが今後、起きれば普通の米国人も「韓国は敵側の国だ」と一気に見なすと思います。
「同盟廃棄」を「非核化」と取引
――専門家の変化は米国の外交政策にも反映するでしょうね。
鈴置: もちろんです。というか、そもそもトランプ(Donald Trump)大統領は米韓同盟に重きを置いていない。米韓同盟の廃棄を北朝鮮の非核化と取引する腹つもりです(『米韓同盟消滅』第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。
時々、本心を覗かせます。5月8日にトランプ大統領は、名指しはしないものの韓国と誰にも分かる形で、米国に支払うべき防衛分担費を支払っていないと非難しました。
その際、韓国を「我々を相当に嫌っている」(probably doesn’t like us too much)と表現しました。VOAの「Trump Reignites Cost-Sharing Dispute with S. Korea」(5月9日、英語版)が報じています。
アマコスト氏ならずとも、米国の指導層の間では韓国人の根深い反米感情は共通認識となっているのです。
そんなトランプ政権の同盟破棄指向を食い止めていたのが、アジア専門家と安保専門家でした。でも、そのアジア専門家がついに「米韓同盟はもう持たない」と言い出したのです。
おりしも9月10日、トランプ大統領はボルトン(John Bolton)大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任すると発表しました。
北朝鮮への強硬策を主張してきたボルトン補佐官が政権から姿を消したことで、米国が北朝鮮との対話再開に動く可能性が増しました。先に申し上げたように、「対話」の先にあるのは、「非核化」と引き換えの「同盟廃棄」です。
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