自衛隊員は基地で使うトイレットペーパーを自腹で買う 理不尽すぎる自衛隊の環境
日本の安全保障を担う自衛隊は、予算不足で制服や装備、弾薬が十分に買えない。挙句に、基地のトイレでは、トイレットペーパーさえ常備されていないという。そんな理不尽な環境で激務をこなす自衛官を描いた『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)が9月1日に出版された。著者は国防ジャーナリストの小笠原理恵氏である。
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昨年の11月1日、自衛隊記念日でもあるこの日に、国会の衆議院予算委員会でこんな質問がなされた。
「すごくミクロで大変申し訳ないんですが、逆に、自衛官の誇り誇りと言っている総理にこれはぜひ聞いていただきたいんですけれども、トイレットペーパーの、何か人数当たりの何センチとかという基準を決めていて、それが大抵足りなくなって、自衛官の方は自費でトイレットペーパーを買っていると。どこの役所で今どきそんなことがあるんですか。これは真っ先に解消していただきたいと思うんですけれども、いかがですか?」
質問したのは、立憲民主党の本多平直衆院議員。これに対し、岩屋毅防衛相(当時)は次のように答弁した。
「そのような話は、実は私も防衛大臣に就任する前に、地元の自衛隊家族会の皆さんから聞かされたことがございました。お尋ねのトイレットペーパーについては、隊員が自費購入していた場合もあると承知しております。しかし現在では、消耗品のなかでも特に優先度の高いものとして、各駐屯地が予算を執行していると思いますが、さらに、これについてもきちっと行きわたるように、隊員の負担ということにならないように、しっかり指示を出したいと思います」
安倍総理も、こう答えている。
「このミクロの問題については、ただちに対応していきたい」
小笠原氏によれば、
「ある自衛官が外出先から帰ってきたときの話です。朝からお腹の調子が悪くて、基地に帰ったら真っ先にトイレに駆け込んだのですが、その時、“ヤバイ!”と。基地のトイレにはトイレットペーパーが常備されていません。自衛官はマイトイレットペーパーを持ってトイレに入るのですが、切羽詰っていたので忘れてしまったのです。そこで彼は、メントールが高配合されたフェイスシート、ギャツビーで代用したのですが、清涼感で思わず“ぐぅ”と声が出たそうです。ギャツビーならぬケッツビーですね(笑)」
小笠原氏は、2014年から自衛隊の待遇問題を考える『自衛官守る会』を主宰。現在、WEBメディア日刊SPA!で「自衛隊ができない100のこと」を連載中だ。
「私が日刊SPA!の連載でこの件を最初に書いたので、取材で自衛隊の基地に行くと、自衛官から“トイレの人”と呼ばれます。自衛隊の予算不足の象徴として取り上げましたが、国会で問題となってからは、かなり改善されています。それでも九州の基地ではまだ常備されていないところもあるようですが……」
もっとも、トイレットペーパー問題は解決しても、理不尽な環境はまだまだ改善されていない。
「16年4月、熊本地震が起こった際、自衛隊は近隣県の基地だけでは対応できず、全国に応援を要請しました。一番遠方から駆け付けたのは北海道の隊員でした。彼らはトラックの荷台に乗せられ、5日かけて被災地入りしているんです。信じられないですよね。福岡まで交通インフラは問題ありませんでしたから、飛行機や列車を使えば24時間以内に到着できたのに、なんで時間のかかるトラック輸送にしたのか。理由は自衛官には旅費が使えないためです。輸送費しか出ないので、隊員をトラックの荷台で運ぶしかないんです。隊員は荷物扱いですよ。荷台に板を敷いて座るので、振動がひどく坐骨神経症になる人が多いとか。被災地に着いた時はヘロヘロになっていますよ。それでも隊員は文句を言いません。耐えるのが仕事のようなものですからね」
2011年の東日本大震災の時はどうだったか。
「震災後、さる自衛官が米軍の艦艇に乗り込んで、食堂で米兵と話をしたとき、東日本大震災が話題になりました。米軍の海兵隊は『トモダチ作戦』で被災地に物資を運びましたから、そのことへのお礼を言うと、長期の支援活動に参加した米軍は長期の休みをもらい褒章を受けたと話していたそうです。自衛隊も頑張ったから、勲章をもらっただろうと言われたそうです。実際は、勲章どころか給与が10%カットされたと言うと、信じてもらえなかったそうです。国は復興費用を捻出するため、公務員の給与を10%カットしたのです。泥まみれになって働いても給与カットじゃあやってられないですよね」
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