アラフォーバツイチ女性が再婚相手に自分の姓を名乗ってもらおうとしたら双方の親にガチギレされた件
現代社会を生きる女性が避けては通れない「婚活」「結婚」「妊活」「子育て」。これらのライフイベントに伴う様々な困難にぶつかりつつも、彼女たちは最終的には自分なりに編み出した「ライフハック」で壁を乗り越えていきます。読めば勇気が湧いてくるノンフィクション連載「女のライフハック」、待望の第5回です。
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結婚はふたりでしたのになぜわたしだけ
3年間の同棲を経て、恋人と結婚することになって初めて気が付いたことのひとつが、世の中には自分の姓に、並々ならぬ愛着を持つ人がいることだった。
記入した婚姻届を前にして「これで苗字を残せるかもしれない」と、感激している恋人の姿を目にして「そこにこだわりを持ってたのか」と感心したと同時に、わたしが籍から外れることで、わたしの旧姓は消滅する可能性が高まった……という考えもちらりと頭に浮かんだが、だからといってそれについて別段、抵抗感を持ったわけでもない。
というのも、わたしは普段はペンネームで活動しているため、少し大袈裟な言い方をすると、先祖代々の姓どころか、親がつけてくれた名も、「とうの昔に捨ててしまった」という意識がある。実際、仕事関係者はもちろんのこと、友人や夫までもが、わたしのことをペンネームで呼ぶ。だから、結婚を機に姓が変わることなんて、なんでもないことだと思っていた。
けれども、それがまったくもって大間違いだったと気が付いたのは、婚姻届を出すと同時に煩わしい手続きが降って湧いてきてからだった。
免許証に健康保険証、カードの類、パスポートそして銀行口座名から図書館の貸し出しカード、生命保険関連、ネット通販に登録してある配送先の宛名まで、とにかく多岐に渡っての名義変更が煩雑なことこの上なく、おまけにわたしの持っているキャッシュカードは、クレジット機能が付帯しているため、再発行まで数週間かかるという不便さで、パスポートに至っては変更手数料が6千円もかかるという。
結婚はふたりでしたというのに、なぜわたしだけ。警察署や役所や銀行に自転車を走らせながら、その理不尽さに新婚の甘い気持ちも吹き飛んでいくようだった……というような愚痴を既婚の女友達に話すと、8割方は賛同してくれる。それくらい、姓を変えることに伴う各種変更の手続きは、誰にとっても面倒なことだと思うのだが、さらに離婚経験者に言わせると、「別れた時は、もっと最悪」なのだという。
離婚という、ただでさえ精神的ダメージを負った状態で手続きをこなさなくてはいけない上に、ひとつ手続きする度に、否応なく自分が結婚に失敗したことを思い知らされて、ジワジワと心が痛めつけられる……それは確かに想像しただけでしんどい。「だから、日本も選択的夫婦別氏制度になって欲しいし、それが実現しない限りもしも再婚するなら、事実婚がいい」と、離婚経験のある友人は言っていたが、しかし、考えてみれば名前を変えずに済む方法はもうひとつある。
夫側に自分の姓を名乗ってもらうという選択だ。そこで今回は、妻側の姓を採用したという、越野明日香さん(仮名・36歳 家族構成:夫37歳)に話を聞いた。
「そもそも、わたし、二度目の結婚なんですよ。一度目の結婚は20代の時だったんですが、その時は夫側の姓になりました。男性側の姓を採用するのが当然だと思ってたから、素直に従ったというか」
しかし、姓が変わったことで明日香さんに降りかかってきたのは、例によっての煩雑な手続きだった。
「まずハンコを2種類、実印と認印を作って、警察署に行って免許の名義変更の手続きをして、それを証明書として銀行に持って行って、パスポートも……とかで何日もかかるわけですよ。休日は受け付けてないところもあるから、会社を半休取って。
その時は、そんなものかと思ってやったんですけど、3年で離婚することになって。またすべて、名前を戻さないといけないわけじゃないですか。免許、銀行、パスポートと、同じことをもう1回。しかも、パスポートの名義変更は6千円かかるから、合計で1万2千円も払ったことになる」
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