巨人、優勝マジック消滅で左腕対策が急務【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人、広島との一山を勝ち越したが、思わぬ一山が待っていた。阪神戦の負け越しだ。2位のDeNAが広島に勝ったため優勝マジックが消滅した。

 DeNAとは4ゲーム差。もちろん、まだまだ巨人が有利だ。残り21試合、まずは確実に5割で乗り切ればいい。

 だが、ここに来て気になるのは左腕に対する苦手意識だ。1日の試合では岩貞祐太に牛耳られた。確かにコントロールはよかったけど、すごい投手というワケではない。6回を3安打は左腕への相性の悪さが出た格好だ。8月30日も高橋遥人に途中まで好投を許した。

 今季6度目の完封負けだが、最近はDeNA・今永昇太、広島のクリス・ジョンソンに封じられている。

 巨人が左腕への苦手意識があると踏んでいるから自信を持って攻めてくる。残り試合21、他の5球団は巨人に対して左腕は当然、右左に関係なく調子のいい投手をぶつけてくるだろう。

 特にDeNAとは対戦が6試合ある。今永、東克樹、石田健大の左3本柱を中心に戦いを挑んでくるだろう。

 まずは左腕対策が急務だけど、坂本勇人、岡本和真が少し調子を落としているのも気がかりだ。ことに坂本、バットが下から出ている。速い球にはついていけない。

 それに詰めの甘さも致命傷となる。8月31日の試合では同点の七回、山口俊が代打・中谷将大に決勝弾を浴びた。17年には20本塁打を放っており、ここは1発狙いが見えていた。変化球で追い込みながら、真っすぐが得意な打者に高めに浮いた真っすぐを配した。これじゃあ、打たれて当たり前だ。失投もいいところだ。

 残り試合が少なくなればなるほど、1球1打が大事になる。油断は禁物、1つのプレーがどこでどう転んでいくか分からない。

 先ほどまずは5割で乗り切ればいい。こう記したが、決して簡単なことではない。まだ安心はできない。今年はペナントの行方が読みづらい。パ・リーグだって、ソフトバンクが最大「8・5ゲーム差」を付けていた西武に一時はゲーム差「0」に迫られた。

 野球の怖さだ。

 巨人は3日から中日、ヤクルトとの6連戦だ。まずは1戦1戦をしっかり戦い、勝ち越してほしい。10日からのDeNA3連戦が終盤戦の大きなヤマ場となるだろう。

 阪神のユニホームを脱ぐことになった鳥谷敬内野手が話題になっている。私の見るところ、本人は現役を続行したいのだと思う。まだ38歳だ。自信があるだろうし、福留孝介は42歳で頑張っている。名球会で鳥谷とは顔なじみだが、おとなしい男で、どちらかと言えば地味なタイプだ。同じ阪神を辞めた選手でも江本孟紀、金本知憲たちとはタイプが違う。

 ましてやいま、巨人のコーチをやっている元木大介、宮本和知らのようにタレント的な活動ができるとは思えないし、本人も思っていないのだろう。

 実際、DHのあるパ・リーグならまだいけるだろうし、もしかしたら現在、獲得を検討している球団があるかもしれない。

 この季節になると、起用されなくなったベテラン、特に実績のある選手は岐路に立たされる。納得する道を選択してほしい。

※最終勝数を79とすると、巨人は残り21試合を11勝10敗で最終勝率・560、DeNAは残り18試合を14勝4敗で最終勝率・564となる(2日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年9月3日掲載

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