放送開始から40年! 「武田鉄矢」が語り尽くす「3年B組金八先生」秘話
問題の個人化
川上麻衣子は色っぽい子でね。その気はなかったんでしょうけど、沖田と仲がよくて、ロケバスのなかで仲良くお弁当なんか食べていると、担任としても羨ましくて、もう一回、中学生に戻って恋をしたいと思いました。第2シリーズはすごく楽しかったですね。しんどさは変わらないながらも、ハンドルの握り方に遊びができてきたのかな。
88年の第3シリーズからは作風も変わって、日常的な話題を取り上げるようになりました。三食食べることの大切さとか、排便の大切さだとか。一番盛り上がったのは、15歳で父親を亡くした子が一人で葬式をあげるという回でした。
このころから社会が動いて、入試制度が緩やかになりました。どこかの高校には行けるようになって、受験の縛りが緩くなると、学校生活そのものが全体に緩んだのではないでしょうか。ゆとり教育が叫ばれるようになって、勉強することはあまりよいことではないような風潮になって、子供たちは、おっとりはしているけど、緊張するのは苦手になっていったような。
また、子供の声がどんどん小さくなりました。住居の質が上がったせいもあるんでしょうね。大声で話さなくても声が届く。窓も締め切るからノイズがないんです。音声さんも「先生、声がどんどん小さくなってる」と。「そういえば、昔のマッチなんか馬鹿デカい声だったね」と回想したりね。隔世の感があります。
その後も私は、金八を延々とやりまして、プロデューサーも言っていましたが、15歳を舞台に、ここまでネタがあるとは思わなかった。中学生には社会や世界が映り込むんですね。そんななかで、時代とともに問題はだんだん個人化するんです。男の子と女の子が男女の関係になったとか、優がいた不良グループの問題とかではなく、個人の闇、個人の悩みみたいなインディビジュアルなものが問題になっていく。それは日本の問題点の変化と似ているんじゃないですかね。
しかし、32年にわたって金八を務めましたけど、飽きることはなかったですね。もう一つ、金八を演じる際に油断したこともありませんでした。いつも課題を与えられ、それについて考え、それを一本一本繰り返す32年でした。ですから本当に燃え尽きたというか、もう、燃え残っているものはなにもありません。
[3/3ページ]