トランプの顔に泥を塗った文在寅 米韓同盟はいつまで持つのか

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嫌な奴だが阿吽の合意

――破棄したら、米国から怒られるとは考えなかった?

鈴置: トランプ政権が米韓同盟廃棄をカードに使っていることは、文在寅政権もよく分かっている。それなら「同盟を揺らす」GSOMIA破棄を実行しても、本音では怒ってはこないと踏んだのでしょう。

 確かにGSOMIA廃棄に対し、ポンペオ(Mike Pompeo)国務長官をはじめとする米政府高官は不快感を表明しました。

 でも、肝心のトランプ大統領は8月23日、記者団に対し「文大統領は(安倍首相と同様に)私のいい友人だ。韓国に何が起こるか見守ろう」と答え、問題視しませんでした。ホワイトハウスのサイトによると、以下です。

・President Moon also a very good friend of mine. And we’ll see what happens with South Korea.

 米韓の政権の関係は極めて悪い。でも、「米韓同盟の廃棄」という点では阿吽の合意ができているのです。これを見落としてはなりません。

ムーディーズに注目

 もう1つ、注目すべきはマーケットです。米国の歴代政権は韓国が裏切った時には「通貨」でお仕置きしてきました(『米韓同盟消滅』第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。

 今は韓国を「泳がせて」いますが、米国がいつ通貨による牽制を始めるか、予断を許しません。ことに「米中」と「日韓」の2つの経済戦争で韓国金融市場が極めて不安定になっている最中です。

 8月26日のKOSPI(韓国総合株価指数)は前日比31・99ポイントも下げ、1916・31と1900台割れが目前に迫りました。

 ウォンの対ドル相場も前日比7・2ウォン安の1ドル=1217・80で引けました。取引時間中には一時、1220を突きぬけました。

 こんな時に国の格付を下げられたら、韓国市場はひとたまりもありません。1997年の通貨危機の際、ムーディーズは2カ月弱で6等級も格付けを引き下げて韓国を奈落の底に落としました。今も同社の動きに注意を払う必要があるのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年8月27日掲載

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