「女性の方が高学歴」のカップル・夫婦はなぜ上手くいかなくなりがちなのか
「大声も暴力だから」
ある日、キャバクラの営業を終えた後、同僚たちと近くの居酒屋へ行った咲子さんは、そこで店員として働いていた裕一さんに一目惚れをする。
「その場で連絡先を交換して、翌日、さっそくデートに誘いました。それで数日後にデートして、その日のうちに付き合うことに。ルックスはそこまで好みじゃなかったんだけど、なんか、この人と仲良くなりたいって思って……ある意味、運命だと思いました。それが27歳の頃。
そもそも私、大卒の人とか、スーツを着て働く人と、付き合ったことがなくて。バンドマンとか、学外のガテン系の人とか、裏原宿のショップ店員とか、そういう男性ばっかり好きになって付き合ってきて、まっとうな人やきちんとしたレールの人とは、ほとんど関わることがなかった。父親がガチガチのサラリーマンだったから、その反動もあるかもです」
一目で恋に落ちた運命の男性と、結婚に至る。童話ならば「めでたし、めでたし」のハッピーエンドだが、現実は続いていく。
「『この人、ヤバいな』って最初に思ったのは、第2子を妊娠して、臨月だった時のこと。ある日、飲みに行ったと思ったら、なかなか帰ってこない。どうしたのかなって心配になって外に見に行ったら、マンションのエントランスで寝ていて。
さらにちょうどその頃、彼が事故にあったんです。酔っ払って階段から転倒して、5センチくらいのすごい擦り剥き傷を作ってきたことがあって。打ちどころが悪くて、死なれても困るから、病院で脳をちゃんと見てもらって欲しいっていっても、『大丈夫だ』って、頑なに病院に行ってくれなくて」
二人目の出産を控えているにもかかわらず、父親としての意識が薄い行動を重ねる夫に苛立ちを覚えた咲子さん。
「それまでは、私に対しての愛情を表してくれて『すごく綺麗だ』とか『すげえ料理うまい』とか『お前のこと大好きだ』とか、本当にしょっちゅう言ってくれる夫と一緒にいるのは、すごく幸せだったんです。
けどその頃から、人の親として見るとどうなのって思うようになってしまって。それに酒癖がとにかくひどい。仕事から帰ってきたら、まず飲む人で、そこから寝るまで飲み続ける。休みの日なんかは『たまの休みだから』って早々に朝から飲んでるんです。
それで酔いに任せて、子どもを怒鳴ったり、変な絡み方をする。例えば、子どもたちがケンカしてるならまだしも、楽しく遊んでるのに『うっせーな、おめえら!』とか怒鳴るんですよ。『今はふたりで、楽しくしてるんだから、もう少し声を小さくしろで、いいんじゃない?』って私が注意しても、『でも、俺が嫌だから』って基準で怒る。それもすごく怖い顔で。
子どもは怖がって泣くし、私も会話が成り立たなくて困惑する。おまけに、翌朝には覚えてないから脱力してしまう。そのことを女友達に話したら『大声も暴力だから』って言われて。殴られたことはなかったから、まったく気づかなかったけど、『あっ、うちのはDV夫だったのか』って」
このままでは、愛情を保ち続けることが難しいと悩む一方で、裕一さんが乱暴な言動をしてしまう原因は、アルコールにあるのではないかと考えた咲子さんは、そのことを本人に告げる。
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