スーパーにあふれる「発がん性」有害物質 EU指標をオーバーした商品の実名
あなたの食卓に「発がん性」料理(1/2)
世の中で怖いのは一見「安全」に思える場所に潜む「危険」だ。20年ほど前に“発見”された「発がん性」物質もそれに当たる。「焼く」「揚げる」という、基本的な調理法から生じる「アクリルアミド」は、スーパーのみならず、食卓の料理にもあふれている。(以下は「週刊新潮」6月20日号掲載時点の情報です)
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食材を焼いて食べる――それは太古から人類が行ってきた調理法である。食中毒を防ぐとともに、味や食感に広がりを持たせる。連綿と続けられてきたその営みに、突然「NO!」を突きつけられれば、誰でも戸惑うのが当たり前だ。
試しにその物質について、大食漢として知られる、経済評論家の森永卓郎氏に尋ねてみると、
「アクリルアミド? 聞いたことありませんねえ……」
最近では、某ダイエット法で驚異的に減量したことで知られる森永氏だが、お菓子は好物だった。
「私、いま糖質制限してるでしょ。そういうものは食べていませんから、いまは縁遠い話ですが……」
と言いつつ、
「お話を聞いていると、大変なんだろうと思います。がんはなりやすい人はなりやすい。そのアクリルアミド?には気を付けた方がいいですね」
続けて、週刊新潮連載「私の週間食卓日記」で採点を務める管理栄養士の荒牧麻子さんも、
「難しい問題ですよね」
と言う。
「がんはもちろん避けたいですが、人類は食材を焼くことで出る苦みや旨みに魅了されてきましたし、その伝統を捨てるワケにもいかない。一概に否定することは出来ません」
素人でもプロでも、普通に聞けば、誰もが対応に悩む、アクリルアミド。逆に言えば、誰もが知っていてしかるべき問題なのである。
「アクリルアミドとは、化合物の一種。『遺伝毒性』を持つことがわかっています」
と説明するのは、国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子・安全情報部長である。
「アクリルアミドが体内に入り、代謝される過程で遺伝子にくっつき、突然変異を生じさせる。これを『遺伝毒性』と呼び、そうして出来た異常な細胞が後にがん細胞になりやすくなるのです。ラットの実験では有意にがん発症率が上がることが実証され、ヒトに対しても発がん性を有する疑いがあるとされています」
そのため、国際がん研究機関(IARC)は、これを発がん性の科学的根拠の強さ順にグループ分けして、5段階中、2番目のランク(2A)に分類している。タバコや酒に次ぐクラスだ。
このアクリルアミドは、もともと食卓にはないと考えられていた物質。工業用で、主に水処理剤や土壌凝固剤として用いられていたという。発がん性もあって「劇物」指定され、工事現場では厳重に管理されていたから、一般に知られることはなかった。
ところが、90年代末、世界の食品関係者に衝撃を与える出来事があったという。
食品安全委員会の事務局によれば、
「スウェーデンでトンネル工事の最中、水漏れが発生。工業用の資材に含まれていたアクリルアミドが大量に流れ出し、魚が死に、牛にも麻痺症状が出たんです。そこで、政府は作業員や周辺住民の体内のアクリルアミド濃度を検査した。すると、明らかに汚染地域から離れている住民からも低濃度ながらそれが検出されました。そこで調査の結果、ある種の食品からもアクリルアミドが検出されることがわかったのです。当時、多くの研究者にとって衝撃でした」
この研究結果が発表されたのは2002年。まだ20年も経っていない。逆にこのトンネル事故がなければ、人類は食品にそれが含まれていることにまだ気が付いていなかったかもしれない。
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