凪のお暇、偽装不倫…… なぜ今期ドラマは自己評価の低いヒロインが多いのか?

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「チート転生」を選ばない女性たちの幸福論 本当の問題は「理想の自分像」が高すぎること!?

 モテない。生きづらい。現状にそんな絶望を感じたら、異世界に転生して無敵でモテモテの存在になればいい。そんな男性主人公のライトノベルも多い。いわゆる「チート転生」モノである。でも女性の場合は、そう簡単に現世の苦しみを手放さない。耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んでこそ価値ある自分と幸せが手に入る。今期ドラマに透けて見えるのは、そんな我慢強さと不器用さをどこかで重んじてしまういびつな幸福論である。

 自己評価の低さは、恋人選びにも表れる。人気の「凪のお暇」では今のところ、ヒロインの相手がモラハラ男か浮気男かという究極の選択だ。少し前は「だめんず・うぉ~か~」のように、「ダメな男に引っかかる私って」と自虐しあって盛り上がる風潮もあった。しかし今では「こんな恋愛しかできないのは私がダメだから」と、自分をひたすら責めてしまう。

 あるいはそうして「反省している」様子を見せないと、甘えているとか世間知らずと笑われるからこそ、多くの女性たちは「自己評価の低い女性」の殻の中に閉じこもりたいのかもしれない。その殻の中にいれば、多少の不運もあきらめがつくし、余計な批判も耳にせず済む。そしてじっと、天災のような「運命」の訪れをひそかに待っているのではないか。

 とはいえドラマでヒロインを救う男性が、みな顔も物分かりもいい男性というのは、実は自己評価が高い裏返しとも言えるのである。自分の生きづらさや頑張りの対価は、それだけハイスペックな男性でないと釣り合わないと考えているとも言い換えられるからだ。

 生きづらいのは、「自己評価が低い」から? それとも、「あるべき自分像が高すぎる」から? 自己評価が低いヒロインたちが、恋愛での大団円でなく、そこに思いを寄せる展開は来るのだろうか。それとも自己評価の低さを盾に、欲深さという毒性に目をつむり続けるのか。これまたポイズン。反町隆史なら、今度はなんと歌うだろう。

(冨士海ネコ)

2019年8月23日掲載

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