米政府機関から締め出された中国の“監視カメラメーカー” 背後にウイグル弾圧問題
「24時間ぶっとおしの洗脳」
ところが状況は大きく変わった。ウイグル問題が大きくクローズアップされるようになったのは、昨年からだといってよいだろう。新疆における苛烈なまでの人権侵害の実態が、実際に収容されていた人達から生々しい形で伝わってきたことが大きい。
本年5月、カザフスタン人のオミル・ベカリ(Omir Bekali)氏がAP通信のインタビューに答え、自身の収容体験を証言した。ベカリ氏は、ウイグル族とカザフ族の両親の間に中国で生まれ、のちにカザフスタンに帰化している。昨年3月から約7か月に及んだ拘束では、身体的拷問だけでなくイスラム教の否定や政治的スローガンの強要といった精神的圧迫も受けたという。
米国務省の国別人権報告書(2018年版)によれば、収容されている人数は、これまでの約100万人を遥かに上回る200万人以上の可能性があるという。そして共産党による弾圧の手段となっているのが監視カメラだ。ウイグルの不安定化を恐れ、全てを監視しようと共産党が躍起になり、その分だけ今回米国での政府調達から排除された両社が利益を得ている格好だ。
ウイグル問題が大きく取り上げられるようになったのは、米中の対立激化とも大いに関係している。昨年10月4日、ハドソン研究所でのペンス副大統領による演説では、対中国政策が包括的に示されたが、新疆での強制収容については「24時間ぶっとおしの洗脳(around-the-clock brainwashing)」という強い言葉が用いられた。
日本では米中激突といえば関税に焦点が当てられがちだが、その対立点は幅広い。今回の中国監視カメラメーカーへの措置の根拠となっている国防授権法をみると、台湾関係法に基づく武器売却なども盛り込まれており、対立点が多岐に亘るだけでなくお互いにリンクしていることが見て取れる。米中激突を幅広い観点から注視する必要がますますありそうだ。
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