ちあきなおみ、デビュー50周年「意味深タイトルCD」復帰要請に漏らした言葉

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 まるで「天の岩戸」である。表舞台から消えて四半世紀超。一向に復帰の兆しが見えない、ちあきなおみ(71)。周囲は、CD発売に「復帰要請」と、扉の前で踊るものの、当のご本人は戸を固く閉ざしたまま……。

「タイトル、読めば『ビギン』ですよね。意味深だなあ……。再始動へのスタートという意味が入っているんじゃないかなって」

 と、長年のファンが“妄想”を膨らませるアルバムが発売されたのは、この4月のこと。題名は「微吟(びぎん)」。「喝采」などの代表曲が入っているものの、音源自体はすべて昔のものだ。それでも、

「売り上げは2万枚を超えました」(テイチクエンタテインメントの宣伝担当者)

 というから、人気は底知れない。

「今年はデビュー50周年ですし、彼女もそろそろ……」(先のファン)

 ちあきが表舞台から姿を消したのは、1992年のこと。夫の俳優・郷えい治(ごうえいじ)が亡くなった直後であった。2人はおしどり夫婦として知られ、火葬場でちあきが「私も一緒に焼いて!」と絶叫したことが伝えられている。その喪失感の深さが引退の原因と言われているが、それから27年が過ぎた。

「また歌ってほしい気持ちはあるけれど、無理だろうなあ……」

 と遠い目をして呟くのは、元テイチク社長の東元晃(ひがしもとあきら)氏である。東元氏は「喝采」のプロデューサーを務めるなど長年の付き合いがあり、今回のCD発売についても、橋渡し役となった。

「いろいろな用件で連絡をすることがあるでしょ。その時にちょろっと“こんな企画、どうですかね?”とお話をしてみるんですけど、ちあきさんはいつも“ヒヒヒ”と笑うだけ。軽くあしらわれてしまうんです。今回の取材を受けることも伝えましたが、“もうすべてあなたにお任せしていますから”と言われましたよ」

 と言うから、“誘惑”にも負けないご様子。他方で、

「電話口での声はかつてとお変わりない。あの声なら、まだまだ歌を歌ったらお上手じゃないかな、と思わせるものがある」

 というから、返す返すも惜しいのだが……。

 ちなみに、タイトルは、「熱い思いからもれる吐息のような、こまやかさこそが彼女の歌唱。それを表す言葉を探して、『微吟』にたどり着きました」(同)。ファンの願いもむなしく、「ビギン」とは無関係だという。

 元フジテレビプロデューサーで、ちあきの芸名の名付け親の一人でもある、千秋与四夫(せんしゅうよしお)氏も言う。

「公の舞台に出ないことが『幻の歌手』として逆に彼女の存在感を高めている」

 天の岩戸を開かないことで、ちあきは、自らを「神話」に昇華した、と言えるのかもしれない。

週刊新潮 2019年8月15・22日号掲載

ワイド特集「夏女の打ち上げ花火」より

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