「カジノディーラー」はホワイトで高給取り!? 定年後の再就職先としても人気上昇中

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

 長きにわたる議論の末、日本にカジノができるのは、ほぼ確実のようだ。そんななか、カジノディーラーを目指す人が増えているという。若者はこれからの市場の成長性を見込み、年配者は定年後のセカンドキャリアを築くために、“賭け”に出る――。養成機関への入学者も続々増えているというが、いったいどんな授業をするのか? ディーラーは儲かるのか? 「日本カジノスクール」の大岩根成悦校長に話を聞いた。

 ***

 2018年の特定複合観光施設区域整備法案(カジノ実施法案)の成立により、大阪万博が開催される2025年までに日本でカジノが稼働するとみられている。それを見据え、日本初のカジノディーラー専門養成機関「日本カジノスクール」には続々と、ディーラーの卵が集っている。

「日本カジノスクール」は2004年に東京で開校。2018年には大阪校を開校した。短期集中3カ月、6カ月、1年コースがあり、海外短期留学コースもある。学費は3カ月コースで49万5千円だ。現在、生徒数は100人にのぼっている。(総卒業生数は823人)

 その理由として、カジノディーラーなら、安定的に収入を稼ぐことができ、労働環境も“ホワイト”だからだという。

「海外の例をみれば、カジノディーラーは、きっかり8時間のシフト制で、そのうち実働は5時間ほど。というのも、お金を扱う業務ですので、集中力維持のために40分テーブルに立ったら20分休憩といったかたちで働くことになります」(大岩根校長、以下同)

 日本ではまだカジノ運営の実績がないため、給与体系のモデルなどはない。しかし、やはり海外の例をみれば、高収入を期待できる職業だとわかる。

「アメリカのディーラーの基本賃金は、時給にして大体8ドルと高くはありませんが、それとは別にチップ収入もあります。それを含めると、高い人で日給3万円ほど。マカオのカジノディーラーは現地公務員の1.5倍の給料で、フィリピンのディーラーは月収にして5万円(現地の平均月収が3万円)ですから、海外でディーラーは儲かる職業として人気です」

 アジアでは、アメリカと異なりチップの文化がないが、そこも心配ない。カジノディーラーは技能職のため給料も高く、基本給でキチンと還元されているのだ。

「海外と同様に、日本もシフト制などの働き方になるでしょう。給料は通常のサービス業の2割増しほどになると思われます。もちろん、ディーラーは特殊技能職ですから、それ以上になっても不思議ではありません」

 たとえば、飲食店専門の求人情報サイト「求人@飲食店.COM」によれば、2018年の飲食店の平均月給与は東京都で25.8万円だった。これの2割増ということは、31万円になる計算だ。8時間勤務で実働5時間となれば、かなりおいしい仕事と言えそうだ。

定年後のセカンドライフ

 カジノと聞くと、マフィア映画さながらに、無法者がひしめき、人間の欲望が渦巻くなど、どこかブラックなイメージがある。ところが実際は、なかなか恵まれた職場環境のようだ。そんな現在「日本カジノスクール」には、老後を見据えた高齢者も入学してきている。

「カジノディーラーは技能職ですから、定年がありません。シンガポールでは80歳のディーラーもいますし、私のアメリカにいる友人も55歳からこの職業を目指しました。当校でも生徒の9%は50代以上です(40代以上なら25%)」

 実際に、「日本カジノスクール」に通う50歳男性(自営業)の生徒に話を聞いてみると……

「高齢になってもできる仕事を探していました。そんななか、『日本カジノスクール』が大阪にも開校され、ディーラーには定年がないことも知り、またとないチャンスだと思い入学しました」

 別の50代男性(会社員)もこう話す。

「定年を視野に、今後の職業選択を広げたいと思い当校に入学しました。職務内容に大きな変化が起こりにくく、一度スキルを身につけてしまえば長く働けることが決め手でした」

 ほかの生徒に話を聞いても、「定年を見据えて」という動機が最も多かった。

ディーラーには日本人を採用

「日本カジノスクール」に通う生徒のなかには、「カジノの運営は海外事業者が行うため、結局は外国人が優先的に雇用されるのでは?」という不安の声も出ているという。そうした懸念について、大岩根校長は次のように話す。

「たしかに、ディーラーを管理する『スーパーバイザー』と呼ばれる立場の人間には、現場経験のある外国人が派遣される可能性もあります。ただ、マカオやシンガポールなどでは、地元の雇用促進のため、ディーラーは『自国民』のみの採用と決められています。日本はシンガポールのカジノを手本としていますので、ディーラーに外国人が雇用される可能性は少ないと思います」

 さらにシンガポールを例に取るならば、ひとつのカジノに約2千人のディーラーが必要になるという。現在、日本政府は最大3カ所の開業を予定しているため、合計6千人ほどの雇用が生まれることとなる。

 また、カジノには外国人観光客も訪れることが予想される。語学の問題を心配している生徒が多かった。この問題については、「日本カジノスクール」ではどのように対応しているのだろうか。

「ルーレットの配当や数の数え方は基本的に英語ですし、事業者も外資ですから上司との会話も基本的には英語。そのため、英会話能力は必須です。ただ、当校でも英会話の授業は行っており、中には『This is a pen』から始めた人もいました。その方は現在、立派に海外のカジノで働いています。当校も全力で英会話のサポートはしますが、生徒さん自身の努力も当然必要となってきます」

 若年層に比べ、年配者がディーラーを目指す難しさは、言葉の問題だけではない。

「英語やルール、手先の動かし方など、高齢の生徒さんは、やはり若い人よりも覚えるのに時間がかかるため、途中で諦める方が多いのも事実。しかし、それらは訓練すれば必ずできるようになります。高いモチベーションをいかに保ち続けるかが年配の方には求められるのです。日本でカジノが始まれば、ディーラーは必ず人気職になります。早めに準備しておいて損はありません」

 カジノで一攫千金を夢見るのは、利用者だけでない。“ジャパニーズドリーム”を手にするために、ディーラーの卵たちも日々精進しているのだ。

取材・文/沼澤典史(清談社)

週刊新潮WEB取材班

2019年8月21日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。