「カサンドラ妻」が高確率で「DV被害者」であるという現実

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アルコール依存の併発が問題に

「確かに、アルコール依存の問題も同時に抱えている人は多いですね。

 お酒の場合、ADHDの依存問題だけじゃなく、ASDの飲み方というのもあるの。

 対人不安のせいでアルコールを飲んでから人と会う方が気持ちが楽だとか、または飲むとキャラクターが変わって陽気に人と付き合えるようになるとか」(滝口先生)

 元夫はある一定量までは飲んでも飲まなくてもキャラクター的なものはそんなに変わらなかった。しかし確かに、人と会うときにはお酒を飲みたがった。飲酒の有無というより、家と外でのキャラクターが違ったので、外向きの顔を作るためのエネルギーとしてアルコールがあった方が楽だったのだろうか。

 そして一定量を超えると酒乱のスイッチが入ってしまい、どこででも暴れた。

「酒席ではいつも定量を越えて飲んで帰り、家で暴れ奥さんを殴るという話はあります」

 似たような関係の夫婦は周りにも珍しくない。夫婦間のコミュニケーションに発達障害が疑われるような問題があり、そのため揉めごとが絶えず、そこにアルコール問題が被ってきてDVに発展するようなケースだ。社会が考えているより多いのではないだろうか。

「全部ではないけれど、確かにそういう例は少なくありません。そして困難度が高い。アルコールと合併すると本当に大変ですね。

 アルコールの問題は、専門家に夫の問題の大変さを伝えるときにわかりやすいという利点はあります。カサンドラとしては周囲の理解度はともかく、問題を自覚しやすく専門家には伝えやすいと考えてもいい。

 けれどアルコール依存の問題を別にすれば、酒席に参加し、コミュニケーションがとれる明るいいい人に見えるのでやはり周囲にはわかりにくい。

 カサンドラの苦悩として、周りから辛さを理解してもらえないというのがあります。例えばアキラさんのような大人しいタイプの旦那さんだと、情緒的な交流がないことに対する辛さをどれだけ説明しても辛さとしては周りに伝わり難い。そのため妻が一人苦悩し、孤立し、鬱になるようなケースが多い」

 妻の具合が悪くなると、夫は買い物をしてくれたりご飯を作ってくれたりする。

「すると周りから『いいご主人じゃないの』と言われ、鬱になってもなお同情さえしてもらえず、さらに孤独感が深まってしまう」

 そのようなカサンドラ同士の境遇の違いは、自助会などでも影響を及ぼす。

「自助グループに行き、自分は一人じゃないとわかること、分かち合えることはとてもいいことで、大事なことです。一方で、自助グループにはいろんなタイプの人たちがいるので、大人しいタイプの夫だと、うちの夫など大したことがないのかもしれないと感じてしまうこともあるようです」

 それぐらい大したことないと思わされてしまう状況は、カサンドラには突き刺さる。それがやっと辿り着いた自助会でならなおさらである。

「情緒的な交流がないという寂しさは暴力や暴言にさらされる辛さと根っこは一緒なんですよ」

 カサンドラとしての自分を救うためには、問題を整理する必要があるのだ。

〈次回につづく〉

星之林丹(ほしの・りんたん)
1982年、東京都生まれ。結婚を機に制作会社を退職してフリーランスに。6年で離婚、2児の母。

2019年8月19日掲載

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