少年野球の現場で悩む父親ライターの正直な報告 「野球医学」のドクターに「全力投球」のリスクを学ぶ
「脱全力投球」
日を改めて息子をともなって再び馬見塚さんのもとを訪ねた。
息子は普段、痛みを感じていないと言うのだが、自覚症状がないまま損傷があったら怖いと思い……
MRIをとってもらい、画像を見ながら馬見塚さんが言った。
「きれいな状態ですね」
良かった、シロだった。「でも全力投球は避けような」と、帰路息子と話した。
ここに取材時の馬見塚さんの言葉を、目の前の勝利に熱狂しがちな“パパコーチ”への戒めとして記しておきたい。
「(多くの指導者・親が)子どもたちの未来の成長を学童野球で使い果たそうとしているように見えます」
肘や肩の障害を完全に予防できる方法がないとすれば、投げている限り、ケガする危険性は残るだろう。だから「脱全力投球」を心がけるしかないのだろう。
“パパコーチ”のひとりとして野球界への貢献にもつながることがあるとすれば、それは「脱全力投球」の考え方やその根拠をわが子に教えることなのかもしれない。
体の状態を考えて全力で投げないことが、勝利のためならケガにも目をつむる少年野球を、いや、むやみにがんばることを要求する日本社会そのものを変えるひとつのアプローチになるかもしれない。
“パパコーチ”はそんな青臭い夢想とともに今日もグラウンドに立っているのである。
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