“このままじゃ子どもを殺しちゃうから助けてください”自ら110番した双極性障害・双子の母を救った「援助希求性」

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リスクだらけの妊婦生活

「その時に、お医者さんに自分の双極性障害のことも伝えたんだけど『まさかリーマスを飲んでるの? とんでもない!』って言われて。双極性障害で飲まなきゃいけない『リーマス』って薬があるんですよ。これが胎児の奇形を誘発する可能性があるというので、妊婦には禁忌の薬に指定されていて。だから基本的に子どもを作るときには断薬しなきゃいけないし、もちろん妊娠中は飲めないって決まってる。

 妊娠前にかかっていた精神科の担当医からは、『症状が治まるまで、減薬はまだ出来ない。子どもを作るんだったら、収まってから妊活しなさい』って言われてもいたんです。けど、35歳くらいの時に、高齢出産リスクが怖くなったんですよね。それで、リスクを背負うのは自分だしって思って、夫とも話し合って。それに調べたら、リーマスは日本では禁忌だけど、アメリカでは禁忌ではないっていうこともわかって、子作りを始めちゃいました」

 リーマスを服用したままで妊活を開始し、ちょうど1年ほどで妊娠が発覚。喜んだのも束の間、まさかの多胎児であることが判明。双子、障害リスク、自身の双極性障害を周囲に心配されながら、精神科と産婦人科との連携が必要だということで、双方の科のある総合病院に転院し、マツコさんの妊婦生活はスタートした。

「双子ってことは遺伝子が同じ確率もあるわけだから、確率的に障害を持った子が2人生まれるかもしれない。それを、自分にも障害があって育てられる?って医者には聞かれて。うわっ、すごいことになったぞって思いましたね。でも、出来ちゃったものはもう仕方ないし」

 しかし幸運にも、妊娠中の症状は比較的、落ち着いていたという。

「これはわたしも妊娠前から知識として知っていたし、担当医も言ってたんだけど、妊娠してる間は双極性障害の症状が収まるっていう現象が多いそうなんです。責任感とか生きがいが出来たことで、自分はダメって思いこむことが減ったりして、そういうふうにプラスに思えれば安定してくるっていうのがあるみたいで。それで、薬は比較的、副作用が少ないものを、寝る前に飲むくらいでした」

 一方で妊娠特有の体調不良は容赦なく襲い掛かってきた。つわりに加え、双胎妊娠の場合、妊娠中毒症になりやすく、また、その重さゆえに母体に負担がかかり、早産のリスクが高い。マツコさんも妊娠糖尿病を発症し、入院することになり、さらには切迫早産で安静(=ベッドの上での生活。移動の時は車椅子を使用する)、24時間点滴を言い渡されてしまう。

 妊娠34週の出産を目指して頑張ったものの、もうちょっとというところで、看護師の点滴針の打ち方があまりに下手なことで大爆発。点滴を抜いて暴れて、帝王切開で緊急出産することになった。やや小さめながらも、心配していた障害もない、女の子の双子だった。ほっとしたのも束の間、産後、マツコさんはまた精神のバランスを崩してしまう。

「娘たちは1カ月くらいNICU(新生児集中治療室)に入ることになったんだけど、そこまで気が張り詰めっぱなしだったのと、双極性障害の薬を絶っていたことで、私が産後うつになっちゃったんです。『育てられないよ。無理だよ』って、完全にネガティブモードに入っちゃった。それなのに、事情を知らない看護師さんに『NICUにぜんぜん顔見せないけど、子どもを育てる気があるんですか?』って言われて。そこで号泣」

 入院生活を送ることに嫌気がさしたマツコさんは、その事件がきっかけで、精神科の医師が止めるのも聞かずに退院。自宅で療養生活へと入ることになった。

「夫とふたりの時は、うつ状態の時はじっとして、夫が帰ってくるまで待てば済むだけだし、テンションが上がり過ぎちゃったら、睡眠薬をガッて飲んで、余計なことをしないように寝ていればよかったんだけど、でも子どもができたら、そういうわけにいかない。恒常性っていうのかな。常に適度なパフォーマンスを出さないといけないからそこが大変だった」

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