上岡龍太郎の「反社と芸人」論、今見ても納得しかない

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「アホなことばかり言うてると吉本に入れるで」

 もっとも、不寛容化する世の中が芸人に良識を求める不合理の存在も指摘している。

「だけどこのごろあの、我々でもテレビなんかで(ものを)言うと、“そうだ、まったくその通りだ”“やあ、いいことを言う”とかね。どうも、世の中がね。たとえば政治家、宗教家、教育者、実業家。こういう人らがきちっとしてれば我々苦労することなかった。我々は好きなように、相変わらず酒飲んで女抱いて博打して過ごせたのに、あいつらが総崩れやからね。あの責任が全部こっちきてしもてん。で、テレビ出る芸人は、芸人といえども一般人としての良識を持て。良識があったら芸人になってないちゅうんやけどね」

 大阪のおばちゃんはしばしばこう口にする。「アホなことばかり言うてると吉本入(い)れるで」と。色んな解釈が可能だが、ワルや不良の受け皿として吉本が機能していたことも意味している。今般喧しいように、吉本に良識を求めるなら、ワルや不良の居場所がなくなるじゃないか――。上岡の問わず語りと通底している。

 上岡を直撃すると、

「申し訳ないけどそういう取材にお答えすることはありません。もう私は一般人ですから」

 とだけ話した。往時と変わらぬ黒縁眼鏡に白髪のオールバック、口ぶり。ならば、その“正論”も不変だろうか。

週刊新潮 2019年8月8日号掲載

特集「『朝日新聞』が社説で勘違いする『吉本問題』への溜め息」より

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