「ゴールデンバット」と「わかば」「エコー」廃止で分かれる明暗

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〈とりとめのない楽書をしながら、バットを7箱も8箱も吸い〉。小説『富嶽百景』にも登場する「ゴールデンバット」。太宰治も愛喫した煙草が10月以降、在庫の販売を最後に廃止される。同時に「わかば」と「エコー」も姿を消すが、両者の今後には大きな違いがあるという。

 JTによれば、3銘柄の廃止は“今年9月末の旧3級品特別たばこ税率撤廃により、大幅に値上げをせざるを得なくなるから”としている。ご存じのように、煙草の税率は高い。ひと箱480円の煙草なら、その62・6%にあたる約300円が税金なのだ。全国紙の社会部記者の解説では、

「かつて、品質のあまりよくない葉たばこで製造されていた煙草は3級品と呼ばれ、税率が低く設定されていました。その名残で、ゴールデンバットなどの大衆煙草は旧3級品として扱われていたものの、その軽減期間が9月末で終了するのです」

 3銘柄は、いずれも販売開始から50年以上経過している。長らく愛喫していた喫煙者は困惑するはずだ。JTのIR広報部に聞くと、

「お客様からはメールや電話で“寂しい”とか、“困る”といった声をいただいています。3銘柄の廃止にともなって、『わかば』と『エコー』については、従来の吸いごたえや味わいを変えずに紙煙草からリトルシガー、葉巻タイプで9月中旬から販売予定です」

 ゴールデンバットは、他に先駆けて今年2月からシガータイプで販売されているが、

「シガータイプは、北海道での限定発売。全国での販売は未定です」

 ゴールデンバットは他の2銘柄よりマーケットが小さいためらしいが、ファンは今後どうすればいいのか。

「ゴールデンバットを吸っていた人は、北海道へ買いに行くしかないんでしょうかね。彼らには、“お悔み申し上げます”としか言いようがありません」

 こう語るのは、愛煙家で漫画家の黒鉄ヒロシ氏だ。

「『麻雀放浪記』の阿佐田哲也さんはゴールデンバットも吸っていたし、エッセイにも登場させていた。そんな歴史ある煙草が廃止されるのは寂しいですね。長年、僕が吸っている銘柄はハイライト。無くならないように、せっせと毎日吸っていますよ」

 太宰も阿佐田も、泉下で泣いている?

週刊新潮 2019年8月8日号掲載

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