カサンドラは「パートナーがアスペルガーだから」ではなく「情緒的な交流がない」ことが原因で引き起こされる
発達障害診断テストの気になる中身
自分はカサンドラだと一度は確信したのに、なぜその私が発達障害のテストを受けにいったのか。今冷静に考えると変な話である。
私の場合、夫にテストを受けさせることができなかったのが一番の理由だと思う。
いつも夫婦間で意見が180度食い違う。
「言った」「言ってない」
「やった」「やってない」
水掛け論だ。
どちらかの認知が歪んでいるに違いない。
手っ取り早く自分の認知が歪んでいる可能性を否定したかったのだ。
受けたテストはWAIS-III、AQ-J、バウムテスト、ロールシャッハテスト、SCTの5種類だ。簡単に説明すると、WAIS-IIIとは、いわゆるIQテストのことである。実施時間60~95分ほどのテストで、パズルのように図形を並べかえたり、言葉の意味を答えたり、数字を暗唱したりとひたすら問題に答えていく。言語性IQと動作性IQと全検査IQが測れるほか、言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度という分野別の得意不得意の傾向がわかる。
そして自閉スペクトラム症のスクリーニングテストがAQ-Jである。社会的スキル、注意の切り替え、細部への注意、コミュニケーション、想像力の5カテゴリーで各10問ずつ計50問の質問に対し、「そうである」「どちらかといえばそうである」「どちらかといえばそうでない」「そうでない」の4段階で回答し、自閉スペクトラム症の傾向をみる。
残りのテストはどれも投影法と呼ばれる心理検査である。バウムテストは木を1本描き、ロールシャッハテストではインクの染みから想像するものを答え、文章完成法と呼ばれるSCTでは、文章の続きを創作する。その結果から精神状態やパーソナリティーを分析していくというものだ。
WAIS-IIIのテストは面白かった。長時間に及ぶテストだが飽きないように問題が組まれており、集中して取り組めた。
結果は104(言語性IQ)、115(動作性IQ)、110(全検査IQ)で、平均の上の水準と出たものの、群指数のスコアが105(言語理解)、106(知覚統合)、96(作動記憶)、113(処理速度)となっており、処理速度と作動記憶間の数字の有意差を指摘された。これは視覚情報を素早く正確に順序立てて処理する速度は速いが、それに比べて耳で聞いた情報を記憶して一時的に留めて脳内で処理するという作動記憶が弱いということだ。つまり「頭に留めた記憶が薄れる前に行動に移そうとする傾向があるかもしれない」ということらしい。簡単に言えばおっちょこちょいということで、自己評価と一致している。
そしてAQ-Jのテスト結果だが、私のスコアは50点満点中7点だった。このテストは33点以上だと自閉スペクトラム症が疑われる。健常な社会人の平均値は11.5であり、私はそれをも下回る「非常に低い」スコアで、自閉スペクトラム症圏は完全に否定されていた。常に周囲に気を使い、場を取り持つような役回りが多かった結婚前の自己イメージに近い結果だ。
その他の心理検査では強いストレス状態を指摘された。「内的に複雑な精神状態にあることが示唆される、クリスマスツリーからは現実を否認したいことが窺える、心が重苦しくもやもやとしている、感情の浮き沈みが強い、今まで通りに問題を処理できず、不安感が起こると衝動的になってしまう自分を持て余している」などなど。その通りである。
レポートの最後はこう結ばれていた。「ストレスを感じ、従来通りに思考することが難しくなっており、それに付随してイライラ感が生じていることが窺える。本来は『そんなことはありえない』と知性化して感情刺激から距離を置く方だと思われるが、現在そのような対処ができなくなっており非常に心理的に圧迫されている。第三者に気持ちを吐き出し、不安感情に圧倒された状態から脱却していくことが望まれる」と。
傾向的に自分の認知が歪んでいるかもしれない可能性はこのテストでほぼ否定された。ではこの「世にも奇妙な物語」はカサンドラのせいなのだろうか。
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