久保建英を育てた父の「個に磨きをかける指導術」「読み聞かせ」
個に磨きをかけられた
「たとえば、ボールを止める、蹴るにしても、首を振って必ず周囲を見渡してから動く。ドリブルはタッチを多く、緩急をつけて足の裏を多用する。右足も使えるように、シュートは浮かさずにゴロで、キーパーの動きを見て蹴る。いま、建英は“体の後ろに目があるようだ”と評されていますが、幼少期のトレーニングを通し、頭を振って周囲を見ることを体で覚えたんです。キック一つにしても回転をかけるのか、強いゴロのボールを蹴るのか、その場で判断させてきたことが瞬時の判断力に結びついている。また、ボールが来ないときも足を止めずにステップを踏ませてきたので、一歩目の踏み出しの瞬発力が上がっています」
そして、こう結ぶ。
「いまの日本には、ボールを曲芸のように扱える子は大勢いますが、個を伸ばせない。指導者はチームとしての戦術を教えざるをえないからですが、建英の場合、その前に父のマンツーマン指導で、個に磨きをかけることができたんです」
だが、“個”として判断するには知性が、チームプレーのためにはコミュニケーション能力が要る。その点も建史氏は抜かりなく、
「何百冊も絵本を買い、建英のお気に入りは『いないいないばああそび』『11ぴきのねことあほうどり』『ともだちくるかな』『十二支のおはなし』『ちからたろう』など。ほかにも図書館で週に20~25冊も借りて、毎日読み聞かせたそうです。また、幼稚園やサッカーの送迎のときは宮沢賢治のお話のCDを聴かせ、夜、枕元では『三国志』『水滸伝』のほか戦国武将伝のあらすじを聞かせたそうです」(先のジャーナリスト)
ここは建史氏に直接語ってほしいところだが、
「結構です」
の一言。だが、着ているのは建英が契約するアディダスのポロシャツ。息子自慢が伝わるが、自慢しすぎて嫌味になるのを避けての取材拒否だろうか。
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