ポジティブな老後論(KAZUYA)
今や世界的に平均寿命が伸びて、人生100年時代とも言われています。
実際に日本の平均寿命のデータを見てみましょう。1902年に公表された第1回生命表によると、男性42.8歳、女性44.3歳に過ぎません。100年ちょっと経った現代はと言えば、厚生労働省の最新の簡易生命表を見ると男性81.09歳、女性87.26歳まで伸びているのです。単純に考えると100年で倍程度になっています。
栄養面でも100年前とはまるで違いますし、発達しつづける医療環境も大きな要因でしょう。多くの病気を治すことが出来ています。今後さらに治療可能な病気は増えるでしょう。
そして昔は60代でも結構な老人という印象がありましたが、現代の60代は若々しく元気があります。
『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著 池村千秋訳)という本が3年ほど前に出版され話題になりました。まさに人生100年時代を見据えた考察が展開される中で、教育・仕事・引退という20世紀に定着した人生のテンプレ的3ステージは変化していくとしています。
著者は、時間の組み立て方を変えるべきだと提唱します。長寿化すると、当然人生において使える時間が圧倒的に増えるからです。人生70年なら61万3200時間。人生100年なら87万6千時間もあるのです。
1万時間程度、継続して取り組めば大体何事もプロレベルになるという「1万時間の法則」で考えると、人生が長くなれば相当色々なことに取り組めるでしょう。
従来の3ステージの人生ではなく、今のうちに先を見据えてマルチステージの人生を各々が考える必要があるのです。
当然余暇の使い方も変わってくるでしょう。
言い回しとして面白いのは著者が消費とレクリエーション(娯楽)の比重を減らして、投資とリ・クリエーション(再創造)の比重を増やすことだと書いている点です。
遊びに行ったり、家でゴロゴロしたり……休日は文字通り休んでいたわけですが、未来のために知識やスキルを身につけて無形の資産を形成すべきだということです。
人生が長くなる一方、日本は少子高齢化の傾向が続きますから、細く長く働く上でも無形の資産が重要になってくるでしょう。
年金にしたって、この少子高齢化の時代だと、一定の給付を得たければ、受給開始を遅らせるか負担を増やすか支給額を減らすかになるでしょう。国に頼らなくてもやっていけるような有形・無形の資産形成を国民一人一人が考えなければいけません。
しかし人生100年時代と言いつつ、先日発生した京都アニメーションの火災のように寿命や病気以外で唐突に不慮の死を遂げることもあります。いくら気をつけていても、向こうからやってくる交通事故などは防ぎようがありません。
人間いつかは死にますが、それがいつになるのか……わからないからこそ先のことも考えておかないと。