巨人はなぜ失速したか【柴田勲のセブンアイズ】
一時は巨人が5年ぶりのリーグ制覇に向けて独走かと思ったが、どうやら風雲急を告げてきたようだ。
先週、今コラムを記している段階(22日)では1位・巨人と2位・DeNA、3位・広島とのゲーム差はそれぞれ7、9だったが、29日時点で4・5、5ゲームと縮まった。DeNAは今季初の7連勝をしたし、広島は現在9連勝中だ。〈注1〉
30日からその広島、DeNAと6連戦だ。巨人にとっては正念場だ。とにかく勝ち越し、勝ち越しでいってほしい。この6連戦の結果次第では“三つどもえ”の混戦になる可能性が出てくる。
特に怖いのは広島だ。野球界には「寝た子を起こすな」という言葉があるけど、先日のマツダでの3連敗ですっかり目覚めさせてしまった。
巨人、ここ10戦で3勝7敗。28日の阪神戦で連敗を4で止めたが、これは阪神投手陣の崩壊に乗じたもので、27日の18残塁の拙攻を見せられているだけに、とてもじゃないけど、安心なんてできない。
投手陣、ことに先発陣の頭数はそろっているのだが、どうにも物足りなかった。28日の阪神戦まで9試合も先発に勝ち星がついていなかった。
そんな時、どう対処するかだが、28日の阪神戦に先発して勝ち投手となった桜井俊貴がいい見本になったと思う。先発投手の白星は16日の山口俊(ヤクルト戦)以来、10試合ぶりとなった。
大量の援護点があったとは言え、見事な投球だった。攻めの気持ちが伝わったし、スリーボールとしても果敢にストライクを取りに行っていた。これまで何度か指摘してきたが、桜井、四球を出さなかったのが好投の要因だろう。
ベンチにとって一番イヤなのは四球だ。守っている野手にしても「アー…」てな感じで見ているものなんだ。連続なんてなったらなおさらだ。
25日(ヤクルト戦)のテイラー・ヤングマンがその典型だった。二回途中5失点で降板したが、押し出し2つを含む4連続四球があった。ベンチはお手上げだ。
前日、初登板した楽天から移籍の古川侑利が1回を被安打4で4失点。制球難で2個の四球があった。26日に先発した菅野智之も6回を2失点ながら、一回の失点は四球が絡んでいた。
桜井、7回を被安打9でも3失点。これは無四球だったからしのげたと言っていい。いかに四球を出さないことが大事かということだ。四球を出すくらいなら、まだ打たれた方がいい。
本格的な夏場を迎えて投手陣に疲弊はあるだろうが、極力四球を出さない投球を心がけて欲しい。エラーと四球から失点、しかも大量失点するケースが多い。
もう一度、言う。桜井、お見事だった。
原辰徳監督、25日に大量10人の入れ替えを行った。スコット・マシソン、ヤングマン、中島宏之、クリスチャン・ビヤヌエバ、陽岱鋼を落として、ライアン・クック、戸根千明、田中俊太、石川慎吾、アレックス・ゲレーロを昇格させた。
今季の原監督、たびたびこんな入れ替えをする。でも、1人、2人ならともかく今回はちょっとやり過ぎのような気がする。中島は力がないからしょうがないけど、まあ、これも再出発の意味合いと「チーム一丸」という考えなのだろう。
シーズンは長い。投手陣が良ければ打撃陣が悪い。その逆もある。そのどちらもがうまくかみ合わない。得てしてこんな時期も巡ってくる。
現在、打線をいろいろ組み替えているのも、4番から降格している岡本和真の本格的な復調待ちからで、やりくりと言っていい。幸い、丸佳浩、坂本勇人、亀井善行らがしっかりとカバーしている。岡本は28日の阪神戦で6番に入り、久々に猛打賞をマークしている。
これまで少し良くなっては悪くなり、また良くなっては悪くなる。この繰り返しだったが、今度こそ4番に復活するきっかけをつかんだと思いたい。
30日から東京ドームに広島を迎えての3連戦だ。高卒1年目の小園海斗内野手の活躍が9連勝の勢いを象徴している。マツダでの3連敗を払拭できるか。楽しみだ。
〈注1〉6月下旬の交流戦明けから1分けをはさむ11連敗を喫したものの、後半戦に入って10勝2敗で貯金を3とした。開幕から5カード連続負け越しも、5月には11連勝。浮き沈みの激しいシーズンとなっている。